第2回学びと育ち講演会「現実社会と連動しながら『生きる力』を育む教育とは」を開催しました(平成30年10月1日)

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株式会社教育と探求社の宮地勘司さんの講演の様子
第2回学びと育ち講演会の様子。奥は講師の宮地勘司さん

 平成30年10月1日に、尼崎市立中央公民館にて、第2回学びと育ち講演会「現実社会と連動しながら『生きる力』を育む教育とは」を開催しました。
 講師は全国150校約2万人の小中高生が、実在の企業や社会、先人を題材に、答えのない課題に取り組む「クエストエデュケーション」を運営する株式会社 教育と探究社の宮地勘司さんです。
 宮地さんは今から10年以上前、2001年のある夜、カルロスゴーンさんら著名人が大勢の高校生の前で講演している夢を見たそうです。キャリア教育という言葉が浸透していないこの時から、この見た夢を実現したいとの思いで、当時勤めていた新聞社内にて教育事業を立ち上げました。その後、会社の経営方針の変更から40歳で退社、独立してこの事業を引き継ぐことに。
 今回は民間企業が出した問いを高校生が考える、企業探求コース「コーポレートアクセス」部門の取組について、詳しくお話しいただきました。 


2017年クエストカップ全国大会に集まった高校生
2017年クエストカップ(企業探求コース)全国大会に集まった高校生

 そもそもクエストとは?「探求」という意味です。
 OECDの統計調査によると、日本では諸外国と比較して、成績はトップクラスです。しかし、同じ調査で学習意欲を問う質問には、数学に興味がない、数学は将来自分の可能性をひろげてくれない、数学の授業についていけないと答えた生徒が多く、学習意欲は諸外国と比較して最低レベルであることがわかりました。なのに成績は良い。これはどういうことでしょうか?

 宮地さんは、学生が企業など社会との関わりが希薄なために、将来の目標や社会で必要とされる能力に気づきにくいんじゃないかと言います。
 また、日本のこれまでの教育は全ての木が同じような太さ、大きさになるよう育てる植林の森ではなかったか。まっすぐに整然と育つものの、土地は痩せて災害に弱い。これからの時代に求められるのは、大きく太いうねっている木もあれば、細い木もある、ペンペン草も生えているような個性豊かな原生林の森を育てることではないかと例えていました。

 宮地さんたちは、高校生たちが企業や社会との関わりの中にいることを気付かせるため、クエスト事業のプログラムの前半では、高校生たちが自ら選択した企業のインターン生になり、その企業の商品がまちのどこに、どれくらいあるかといったフィールド調査や企業イメージを問う街頭アンケート調査に出かけさせるそうです。
 一連の取組をまとめた映像を見ると、街頭アンケート調査のシーンでは、まちを行き交う大人に声を掛けられない高校生、声を掛けても掛けても断られる高校生の姿が描かれていました。彼らが普段話をする大人は先生か家族だけ。知らない大人と話をする貴重な機会なんです、と宮地さんは語ります。

 プログラムの後半になるとインターン先の各企業から正解のない命題が与えられます。2017年に大和ハウス工業㈱から与えられた探求テーマは「人間の本気を見せようじゃないか!超高齢社会に夢のある未来を創り出す型破りな土地活用サービスを提案せよ!」
 この問いに対し、企業賞(大和ハウス㈱が選ぶ最優秀賞)を獲得したのは、“故人のありし日の姿や声を録画してサイバー上に残し、お参りはスマホでもできるように。そうするとお墓は不要になるので、墓地を次世代どうしが出会う場へと開発する”という大胆な提案を行った、本市園田にある私立百合学院高等学校でした。


2017年大和ハウス㈱が選ぶ企業賞を受賞した百合学院高等学校
2017年大和ハウス㈱が選ぶ企業賞を受賞した百合学院高等学校

 正解のない問題の答えを考える-プログラムをこなしているうちに生徒たちの目の色が変わってくると宮地さんは言います。そしてクエスト事業を通じて生徒が成長する姿を間近に見ると、今度は先生方に火がつくのだとか。

 文部科学省は、グローバル化の進展やAI(人工知能技術)などの技術革新などに伴い、社会構造が急速に大きく変革しており、予見困難な時代の中で新たな価値を創造していく力を育てることが必要だと考えています。そのため、2020年に予定している大学入試制度改革では、知識だけでなく、思考力・判断力・表現力を評価するとしており、高等学校へは「主体的・対話的で深い学び」に向けた授業をするよう改善を促しています。
 素人ながら「主体的・対話的で深い学び」とは、このクエスト事業で経験するようなことを指すのではないかと思いました。

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 全国150校約2万人の小中高生が、実在の企業や社会、先人を題材に、答えのない課題に取り組む「クエストエデュケーション」。この事業を運営する、株式会社 教育と探究社の宮地勘司さんからこれらの取組についてお話をお聞きし、「『生きる力』を育む教育」について考えます。

■日時 平成30年10月1日(月)午後3時30分~午後5時
■場所 尼崎市中央公民館 小ホール(尼崎市西難波町6丁目14-34)
■テーマ「現実社会と連動しながら『生きる力』を育む教育とは」
■講師 宮地勘司氏(株式会社 教育と探究社 代表取締役)
■対象 市民(在住・在勤含む)
■費用 無料
■定員 60人程度(職員・教員含む)
■申し込み
 9月26月(水)までにama-msk@city.amagasaki.hyogo.jp宛てにメールのタイトル「10/1学びと育ち研修参加希望」とし、お名前と緊急連絡先を記載の上お申し込みください。
 またメールが利用できない方におかれては、お電話でもお受けいたします。06-4950-0387尼崎大学・学びと育ち研究担当

【講師プロフィール】
 宮地 勘司氏 株式会社 教育と探究社 代表取締役
 1963年長崎県生まれ。88年立教大学社会学部卒業。同年、日本経済新聞社入社。02年、自らの起案により日本経済新聞社内に教育開発室を創設する。新聞資源を活用した教材開発に取り組む。
 04年11月、教育と探究社を設立。代表取締役に就任。12年より法政大学キャリアデザイン学部講師。
 05年クエストエデュケーション提供開始。経済産業省「起業家教育促進事業」に採択。第一回クエストエデュケーションカップ全国大会実施。17年クエストエデュケーションがグッドデザイン賞受賞。受講生が単年度2万人突破。ソーシャルチェンジ提供開始。
(参考)クエスト事業HP