第20回みんなの尼崎大学オープンキャンパス「みとりまちってどんなまち?」

  • UCMA

 あなたはどこで人生の最期を迎えたいですか。誰に見守られて最期を迎えたいか、考えたことはありますか?そう聞かれて「家で死にたい」と答える人が多いことをご存知でしょうか。病院で亡くなるより、住み慣れた家で最期まで過ごしたい、と考える人は増加傾向にあるといいます。

 しかしもし結婚していたとしても夫婦のどちらかが先に亡くなれば、残された人は一人で死期を迎えなければなりません。最近では「孤独死」が増え、発見が遅れるケースも。だからこそ、普段から近所の人同士で見守り合う関係を作り、亡くなったときは地域の人でお見送りができるような「まち」を作ろうと活動している団体があります。

 今回のオープンキャンパスのテーマは、「みとりまちってどんなまち?」。瓦宮西園田福祉会館を会場に、みとりまち実行委員会の活動をお聞きしました。


オープンキャンパス史上最多の49人が参加。畳の部屋に座布団を敷き、親戚が集ったようなアットホームな雰囲気で行われました

瓦宮をみとりまちに

 「看取り(みとり)」とは、病人のそばにいて世話をすることや死期まで見守ること、看病することなど、患者を介護する行為そのものを表す言葉。万葉集にも看取りの歌が出てくるなど、日本には昔から死を受け入れる「看取りの文化」があるそう。「みとりまち」は、「看取り」をまちぐるみで行うことなのです。


今年で68歳になるという杉原さん。瓦宮で会社経営をしています

 舞台となるまちは瓦宮。瓦宮は尼崎市の園田地域にある人口約3000人の地区です。「生まれも育ちも瓦宮」という人が多く、最期までここで住み続けたいと考える人もいます。みとりまちの発起人であり、瓦宮で会社を経営する杉原豊弘さんもそのひとり。

 そもそも瓦宮でみとりまち実行委員会の活動が始まったのは、杉原さんの「徳永進さんと上野千鶴子さんの講演会をしたい」という声かけからです。徳永進さんは鳥取市でホスピスケアのある診療所を開く内科医。上野千鶴子さんは、社会学者として女性学やジェンダー研究など行っていて、2人とも「看取り」や「おひとりさま」を説く第一人者です。


4月22日に行われた講演会のチラシ

 杉原さんは、実は学生時代に上野先生のゼミにいたことが。徳永さんの著書からも影響を受け、講演会をしたいと思い立ったそう。周囲の人に話したところ、「ただの講演会で終わらせずに、持続的に地域の人が関われるつながりを作ろう」と2017年2月に「みとりまち実行委員会」を立ち上げました。

 メンバーは、町会の役員やケースワーカー、NPO職員、ケアマネ、ヘルパーなど。ワークショップなどを重ねながら仲間を増やし、今年4月22日に徳永さんと上野さんを招いて講演会を開催。400人の参加のもと大盛況に終えることができました。


右の西山裕規さんはホームホスピスに勤務しています

 みとりまち実行委員会のメンバーは、自分らしく最期まで生きるために、家族だけでなく友人や地域の人とのつながりを作ることで叶えていこうと考えています。実際に今回の会場となった瓦宮西園田福祉会館で、地域の人に看取られながら息を引き取ることが夢だと話す実行委員も。
 みとりまちの考えを深めることで、病院や老人ホーム、介護施設に入ることだけが選択肢ではないという理解が広がったのです。

「自分の望む生き方」を教えてくれるカードゲーム


もしものハナシできる「もしバナゲーム」

 第2部では、もしバナゲームを体験しました。もしバナゲームとは、臨終に対する自分の価値観を知るゲーム。本当は大切だと分かっていても、普段は「死」についての会話は避けられがちです。このカードゲームを通じて、そんな難しい話題を考えたり話を深めたりすることができます。


老若男女混合で行うことで、さまざまな価値観を知ることができます

 カードには、「意識がはっきりしている」や「穏やかな気持ちにしてくる看護師がいる」「家族の負担にならない」「私の思いを聴いてくれる人がいる」などが書かれています。自分一人で臨終のイメージを膨らませることは難しいですが、カードを選ぶことで自分が何を大切にしているのか明確になっていきます。

 参加者からは「看護師や医者のカードよりも、感情的なカードが選ばれていた」や「『良い人生だったと思える』カードが人気だった」などの感想がありました。

あなたは誰に看取られたいですか?

 第3部では実際に看取りの経験をした2人の方からお話を聞きました。
 1人目は、家族を看取った安藤久子さんのお話。安藤さんの夫は、平成10年に難病であるパーキンソン病を発症。週6日在宅リハビリを行い、その甲斐あって自力で歩けるまでになりました。「私は住んでいる団地の中で茶話会を作りました。それはお友達ができたら、もし夫が外で倒れていても周りの人に助けてもらえると思ったから」だそうです。


実際に4年間介護をしてきたけれど、家で看取ることができて良かったと話す安藤さん(中央)

 また安藤さんの話で一番驚いたことは、自宅で亡くなった場合、医者に死亡診断書を書いてもらえなければ、事件として警察の取り調べに応じなければならないこと。安藤さんの主治医は県立病院の医師だったために、亡くなったときに家に来て死亡診断書を書いてもらうことができませんでした。救急車を呼んでも、既に亡くなっている場合は運んでもらうことができません。そのため警察を呼ぶしかなく、数時間に渡る取り調べを受けたといいます。
 「預金通帳から手持ちの現金まで調べられました。私が殺すはずないのにねぇ」と深刻な話の中で笑いを誘っていました。


中央が第三診療所で看護師として働く武蔵さん

 2人目は食満にある第三診療所で看護師をする武蔵真由美さん。これまで多くの患者の看取ってこられ、ご自身が家族を看取った経験もお持ちです。
 「自宅で亡くなることを希望する人は多いですが、実際にそうなる人は少数です。自分が誰かを看取るイメージ、看取られるイメージをしてみてください」と問いかけます。

 また、気軽に何でも相談できる「かかりつけ医」を作ることが大切なのだとか。「主治医に『私が死んだら見に来てくれますか?』と聞いてみてください。嫌な顔をせずに引き受けてくれたら、それは良い先生ということ」と武蔵さん。風邪のときに行く病院を決めておくだけでも、安心につながると話します。


真剣な表情で耳を傾ける参加者のみなさん。最後に感想共有を行いました

 今回は「看取り」という普段話すことの少ないテーマを、重くならず最後まで明るい雰囲気で伺うことができました。参加者からは「主治医は内科医の方が良さそうと思った」や「病院は行かない方が良いけれど、つながりは大切だと知った」などの感想がありました。また、「実際に看取ることはとても大変なことだと思うから、もっと詳しい実情を知りたい」という声も。

 みとりまち実行委員会では、看取りについて考えるワークショップを定期的に行っていますので、興味のある方はワークショップに参加してみてください。また、一緒に活動するメンバーも募集しています。お問い合わせ先は、NPO法人月と風と(06-6493-6965)まで。

 次回のオープンキャンパスは、2019年1月19日(土曜)。上坂部にあるTUMUGUBA(ツムグバ)を会場に「こどももおとなも集まる場」を開催します。2018年4月のオープンからTUMUGUBAを拠点に活動して来た団体のお話を聞いて、地域の子どもたちの「今」を知り、どんな「未来」が描けるのか、をみんなで考えます。ぜひご参加くださいね。

募集案内(イベントは終了しています)

自分らしく最期まで生きられるまちをつくろうと、みとりまちプロジェクトに取り組む園田・瓦宮地域。看取る/看取られることを意識することは、どう生きるかを考えるきかっけになるんです。

■日時
2018年11月28日(水曜日)午後6時30分~午後9時00分(30分前より受付開始)

■場所
瓦宮西園田福祉会館
(尼崎市瓦宮2-32-11)

■参加費
無料

■持ち物
筆記用具

■定員
30名程度

■申込・問い合わせ
尼崎市役所 尼崎大学・学びと育ち研究担当
電話:06-4950-0387 ファクス:06-4950-0173
メール:ama-ucma@city.amagasaki.hyogo.jp