【第23回みんなの尼崎大学オープンキャンパス「尼崎港クルーズで行く!尼崎産魚のおいしい食べかた」】

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 みなさんは、尼崎の海で魚が捕れることをご存知ですか?しかもその魚が美味しいと聞くと、耳を疑う人も多いのではないでしょうか。
 今回は40人を超える親子にご参加いただき、海をきれいにする活動をしている尼海の会・平井研さんと、尼崎の海で渡船業を営みながら、「フィッシュシェアリング」という取り組みを進めている、武庫川渡船・宮本悦男さんから、尼崎の海と環境のことをお聞きしました。

尼崎の海が実はきれいってホント?

 梅雨の晴れ間だった7月6日(土)、今年度はじめてのオープンキャンパスを開きました。今回の会場は、尼崎市立魚つり公園。尼崎の南端に位置し、市内で唯一バーベキューができる公園です。普段は、釣り人とバーベキュー客でにぎわいますが、魚釣り公園は2018年秋の台風で大きな被害を受けて現在も休園中。
 魚つり公園内にある武庫川渡船の宮本さんは、釣り人を武庫川河口沖の「武庫川一文字(いちもんじ)」と呼ばれる、陸地とはつながっていない防波堤に船で送迎する仕事をしています。今回は特別に、その船に乗せてもらい尼崎の海をクルージングしました。


さっそく船に乗り込んでクルージング。ライフジャケットを着て出発進行!

 昔は尼崎の海でも漁業が盛んで、110種類の魚や貝、エビが捕れたそう。しかし、尼崎の漁業組合は昭和48年に漁業権を手放したことで解散。尼崎から漁師さんがいなくなりました。
 しかし現在も85種類の魚が捕れ、実は、お寿司屋さんのメニューに並ぶ魚のほとんどが揃うそう。「魚の産地は、水揚げしたところの地名がつくため『尼崎産』と付く魚は販売されていません。『泉州産』『明石産』と表示のある魚の中には、尼崎で捕れた魚も混じっているんですよ」と宮本さんは話します。


武庫川渡船の宮本さん。少年時代から武庫川河口で海と魚に親しんできました

 船の上では、尼海の会の平井さんに2つの水質調査の実演をしていただきました。ひとつめは水の透明度の調査。白い円盤を水深10mの海に落としていき、見えなくなる深さを調べます。この日は3.5mほどで円盤が見えなくなりましたが、雨の後は赤潮が発生し、透明度が1m以下のときもあるそう。


尼海の会の平井さん。手に持つ白い円盤を海に入れます

円盤が見えなくなるまで、ゆっくり下ろしていきます

 次は、海底のヘドロの調査。専用の機械で採取を試みますが、この日は潮の流れが速かったせいか、うまく取ることができませんでした。それでも、真っ黒な液体と少量のヘドロが水面上に現れるなり、なんとも言えない臭いが漂います。
 どうして尼崎の海底にはヘドロがあるのでしょうか。「実は尼崎の海は栄養分が多すぎる状態で、プランクトンが大量発生しやすい環境です。大量発生したプランクトンはやがて死んでしまい、それが海底にたまったものがヘドロになっています。もっと尼崎の海をきれいにするために、尼海の会では成良中学校等の生徒達とともに、ワカメを育てて多すぎる栄養分を吸収しているんですよ」と平井さん。
 栄養分を吸収したワカメは、堆肥として畑で利用しています。尼海の会では、堆肥化したワカメで菜の花を育て、菜種を絞った油で尼いもの天ぷらを食べ、うんち・おしっこといった排泄物が浄化センターを通って海に返るという「ジュンカン」を創り出しています。


海底から引き揚げたヘドロ。腐ったタマゴのようなにおいがします

尼崎産のお魚を食べてみよう!


成良中ネイチャークラブのみなさんに、G20の配偶者プログラムでも発表した「ジュンカン」の活動報告をしていただきました。

 陸にあがってからは、宮本さんから尼崎の海について詳しくお話を聞きました。宮本さんは、尼崎の海がきれいになったと思える証拠が2つあるといいます。ひとつめは、水の汚れた海を好むといわれる「ナデシコカンザシ」が減ったこと。20年前までは尼崎の海にもたくさんいましたが、ここ5年ほどではほとんど見なくなったそう。

 ふたつめは、武庫川一文字に設置した水中カメラにワカメがつくこと。海藻が育つのは海がきれいな証なのです。実際に毎年行われる保健所の検査では、尼崎の海で捕れた魚と海水は「安全」だという結果が。「魚つり公園には年間10万人の釣り人が訪れますが、そのほとんどが市外の人。市外の人には「武庫川」ブランドで知られていて、尼崎の魚を食べることに抵抗がない。もっと市内の人にも知ってほしいですね」と、海がきれいになったことをPRしていきたいと宮本さんは話していました。

 そのあとは、お待ちかねの試食タイム!今回は、タコの刺身と黒鯛とスズキの唐揚げを用意していただきました。


手前がタコ、奥が黒鯛とスズキの唐揚げです

 弾力があってプリプリのタコと、柔らかくサクサクした唐揚げに、参加者のみなさんは驚きます。子どもたちも「美味しい−!」と言いながら、あっという間に完食していました。


最初は少し抵抗があった人も、最後には美味しそうに食べていました

 実はこの魚は、武庫川一文字で釣りをした釣人が、釣った魚を寄付していったもの。たくさん釣りすぎた人は「釣れなかった人のために」と魚を置いて帰ることが多く、その魚を武庫川渡船が引き受けているのです。
 宮本さんはその取組を一歩進め、魚を捌いて切り身にしたあと冷凍保存。市内7ヶ所の子ども食堂に提供したり、尼崎商工会議所が事務局を担う「伝統野菜活動協議会」と連携し「フィッシュ&チップス」として商品化もしています。自分の釣った魚が、子ども達に届いているというのは釣人にも好評で、モチベーションが上がっているそう。
 「フィッシュシェアリングは、武庫川河口の海と環境に関心を持ってもらおうと始めました。でも、もっと多くの人に伝えるには、どうすればいいでしょうか?」と宮本さんは参加者に質問を投げかけました。

より多くの人に尼崎の海を知ってもらうには?

 宮本さんの問いかけに、参加者からは「幼稚園や小学校、中学校にアピールして次世代に知ってもらったらどうか」や「釣った魚の食べ方や捌き方が分からない人には釣りをすることへのハードル自体が高いので、武庫川渡船で扱いやすいサイズまで捌いてもらえないものか」などの意見が出ました。中には「近所の定食屋や居酒屋でメニューとして使ってもらう」といったアイデアも。近い将来、尼崎の魚を使った料理が尼崎のお店で食べられる日が来るかもしれませんね。


「唐揚げじゃなく刺身を食べてみたい」という参加者のリクエストに応えて、急きょ用意していただいたチヌの刺身。全く臭みがなく、グルメの参加者もうなる一品。

おいしさのあまり、みんな食べるのに夢中です

色水を用いた実験に、子どもも大人も興味津々

一時は欠航も危ぶまれたほどでしたが、天気を味方につけ、クルージングを満喫できました

 参加者からは「尼崎の魅力的な講師の地に足のついた話が聞けてよかった」や「今日は尼崎港のイメージが変わりました!」などの感想があり、大盛況だった今回のオープンキャンパス。
 次回は、9月28日(土)14時から女性センタートレピエで「オトコとオンナ〜『らしさ』の呪いを解くために~」を開催します。
 私たちは知らないうちに「こうあるべきだ」というメッセージを受け取ったり、誰かに送ったりしています。多様な情景・属性のゲストのトークを聞いて、参加者どうしでも対話の機会をもちます。
8月20日(火)と9月10日(火)にはゆるゼミ(事前勉強会)も開催します。

 興味のある人は、ぜひご参加くださいね。みなさんのご参加をお待ちしております。

みんなの尼崎大学オープンキャンパスVol.24 第1回
みんなの尼崎大学オープンキャンパスVol.24 第2回
みんなの尼崎大学オープンキャンパスVol.24 第3回