妄想と遊び心がカギ 尼崎城みやげ品評会 前編

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名物コンペが今年は尼崎城みやげをテーマに実施


写真、品評会のポスター

 阪神尼崎駅の南で建設工事がすすむ新生尼崎城のオープンまであと1年。駅近の気軽さからたくさんの来場者に期待が高まる中、とあるコンテストが2018年3月2日に開かれました。その名は「尼崎城みやげ品評会」。お城が再建される尼崎で、江戸時代の歴史や物語にちなんだおみやげものを新たにつくろうという試みです。

 主催するのは、阪神尼崎駅から連なる中央三和商店街が中心となって作られたまちづくり会社「株式会社TMO尼崎」。これまでも尼崎の地元の産品を掘り起こそうと「メイドインアマガサキコンペ」というコンテストを10回開催してきた団体です。この審査会では過去に「尼崎らしい」「尼崎の人が自慢したくなる」というストーリーにあふれた商品を268件認証してきました。駅前中央公園で、これらの一部としてぽんずやソース、湯たんぽなどの尼崎製品を扱うメイドインアマガサキショップも運営しています。


写真、応募作品の数々

 尼崎城みやげといっても、尼崎には江戸時代のお城の遺構はほとんど残っていません。江戸時代から続くお店もほとんどありません。ただし、遊び心とノリのよさにあふれた企業やお店がたくさんあるはず、とお城の形や歴史、城主のエピソードなどをヒントにしながら城にまつわる物語を創作した商品の募集をはじめました。すると、2017年11月の募集から2カ月でなんと35点ものエントリーが寄せられたのでした。

さて、どんな商品が集まったのでしょうか?


写真、応募作品の一つ、城菓1617、おまんじゅう

 いくつかをご紹介しましょう。和菓子店「寶屋遊亀(たからやゆうき)」(杭瀬本町)は、「城菓1617」という尼崎城郭をイメージした四角いおまんじゅうで応募。築城を手がけた戸田家の家紋をパッケージにあしらうなど歴史のこだわりに加えて、家族や職場でわけやすいようにとおみやげものとしての実用性も考えぬかれています。


応募作品の一つ、エチケットツール、忍び鏡

 製造業の企業からもこんな応募がありました。ステンレスやアルミニウムの板に文字や模様を入れるエッチング加工が得意な「トーホー」(西長洲町)。ニューヨークの地下鉄の看板も同社の技術が使われています。そのトーホーが手のひらサイズのステンレス鏡に忍者のマークを自慢のエッチングで施してエチケットツール「忍び鏡」をつくり応募。初代城主戸田氏鉄が城下を見回る時に、身だしなみに気を配った(らしい)ということから思いついたのだとか。


写真、品評会の様子

 こうした遊び心を審査するのは、これまで10年以上もメイドインアマガサキコンペを見続けてきた尼崎ゆかりの専門家たち。大学教授やPRのプロ、編集者など尼崎ゆかりの6人が、事前に各社に取材をしてきた調査員の説明を聞き、実際に試作品をさわったり試食したりしながら、尼崎城みやげとしてふさわしい商品を選びます。

かつての尼崎銘菓を復活させた高校生トリオたち


応募作品の一つ、お菓子、蘭巾

 「育成調理師専門学校」(開明町)からはお菓子や丼、コーヒーなど6点がエントリー。中でも注目は「尼の蘭巾(らんきん)」というお菓子です。オランダから伝わり江戸時代から昭和初期まで尼崎でつくられた「らんきん」の伝承を元に、どんなお菓子か想像しながら高校生トリオが作った一品です。彼らはなんと去年、全国443チームが出場する高校生お菓子コンテスト「スイーツ甲子園」で特別賞に輝いたつわもの。「これだけ記録に残っているのに、他のどの地方にも伝わっていないことを考えると持ち運びしづらかったのでは」とみたらし餡がかかった丸いお菓子をイメージしたというコメントは、まるで歴史料理ミステリーを聞いているかのようでした。


妄想と遊び心がカギ 尼崎城みやげ品評会  後編