生涯、学習したくなるキャンパスライフ

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 「生涯学習」というと、なんだか真面目で難しそうな印象ですが、塚口にある園田学園女子大学シニア専修コースが取り組む「生涯学習」は、とっても楽しそうで「生涯、学習したくなる」雰囲気。女子大学に通う素敵な二人の男性に会いに行きました。


シニアでも大学生なんです

 阪急塚口駅の南にある園田学園女子大学。駅からの通学路を歩く女子大生たちにまぎれて、パリッとしたジャケットを着て二人のおじさんが歩いてきました。「もしかして、教授?」と思いきや、なんと彼らはこのキャンパスに通う学生さん。

 園田学園女子大学のシニア専修コースは2002年に開講し、毎年300人以上が学生として登録しています。単発の公開講座ではなく、3年制の専門コースなのが特徴。文学歴史学科、国際文化学科、情報学科の中から専攻を選んで、週2回ペースで規定の科目を履修すると、卒業証書ももらえます。図書館や学生食堂などの学内施設も利用でき、クラブ活動まで楽しむことができます。

 今回は、同コースを卒業後、今でも「研究生」として学び続ける、中村米三郎さん(78)と德田將之さん(69)にキャンパスライフについて聞いてみました。


中村さん(左)と德田さん。学科の違った二人はクラブ活動で仲良しに

どうして大学に通おうと思ったのですか

 その理由を聞くと、中村さんは「健康のため」と即答。定年退職後、システムエンジニアだった経験を生かしてパソコン教室を運営していましたが、教室で出会った友人が認知症になり「これは人ごとじゃない」と痛感したといいます。「いつまでも頭を働かせていることが健康の秘訣。健康寿命をいかに延ばすかが自分のテーマ」と71才で入学を決めました。

 一方、化学会社で働いてきた德田さんは、仕事相手だったドイツ人の多くが休暇中に趣味に打ち込む姿に刺激を受け、仕事以外の生きがいを充実させたいという思いがありました。「定年までの労働時間と、定年後の自由時間を計算してみると、どちらも同じ8万時間だったんです。何もしなかったらもったいないでしょ」と65歳で大学生になったのでした。

 「通学で生活にリズムができるし、電車に乗るので身なりに気を配ることも健康にいいんですよ」と中村さん。「何といっても女子大ですもんね。最初は気恥ずかしかったんですが、若いお嬢さんたちは僕らのことなんか気にもしてませんわ」と笑う德田さん。キャンパスでは現役の学生たちと気軽にあいさつを交わして、お互いに気持ちのいい雰囲気だといいます。


女子学生も学内にシニアの学生がいる風景に「もう慣れました」

学ぶって楽しいですか

 カリキュラムを専攻に沿って興味のある授業を自分で選びます。「アジア太平洋文化論」「日本文学Ⅱ」「文化人類学入門」「プログラミング」といったタイトルが並ぶ授業表。1コマ90分の授業は大学さながらです。

 日常的に仕事で使ってきたパソコンについて体系的に学びなおしたいと思い、德田さんは情報学科を専攻しました。「現役の学生時代は、試験さえなければ大学というところは天国なのにと思ってましたが、ここにはそれがない。まさにここは私のパラダイス」と学園生活を満喫しています。

 在学8年目になる中村さんは授業以外にも、パソコン、テニス、ウォーキングなどのクラブ活動にも大忙し。「平均寿命まであと数年。いったい自分は何のために学んでいるのか考えてみたんです。頭脳の老化防止、体力維持、仲間づくり。結局私にとっての目的はこの3つでした」という中村さん。なんと足腰が弱くなっても続けられる活動をと、健康麻雀の活動グループの立ち上げも計画中なんだとか。


生涯、学習。きっかけはそこらじゅうに

 「誰もがはじめはきっかけが必要」と口をそろえます。「リタイアしてから新たに趣味を持つのは難しいもんです。なんでも若いうちに興味を持って続けることが大切」と学びとの出会いの大切さを強調するお二人。最後に「みんなの尼崎大学」について聞いてみました。「“みんなが先生、みんなが生徒”ってコンセプトが面白いね。このシニア専修コースでも、クラブ活動から先生が生まれるといいな(中村さん)」。「自分が若い頃はそんな発想なかった。学びをテーマにお互いに情報交換したいですね(德田さん)」。


 なるほど。「生涯学習」ってシニアの単なる趣味の話じゃなくて、人生をどうやって楽しむのかという大きなテーマが隠れていたことに、お二人が気づかせてくれました。学びに年齢制限はない。老いも若きも「生涯、学習」することが大切だったんですね。