尼崎でいつのまにか広がった自分の生き方

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天野優香さん(35)/フォトグラファー

好きなことは、昔からたくさんあった


 取材場所は、尼崎にある天野さんの自宅。リビングの壁も家族の好きなグリーンを少しずつ塗って手を加えたとか。「DIYが好き。物をつくることが、基本的に大好きなんです」

 フォトグラファーの天野さんは、「尼ノ國」で活動する物書き集団「尼ノ物書キ組」の副長としても活動。取材に行ったり、写真の撮り方講座などを担当したりと、アクティブな女性です。「中学校の夏休みに、奈良市写真美術館に訪れたのが、写真に興味を持つようになったきっかけです。父が、私と弟に一眼レフのオートカメラをプレゼントしてくれたんですが、弟より私ばかりが夢中で写真を撮っていましたね」


 そんな天野さんが大学の進路として選んだのは、写真ではなく、環境デザインや建築を学べる学科。「日曜大工好きの父の影響もあったのかもしれません。家の間取りがのったチラシを見ながら、色々と考えてみたり。お気入りの建物を見つけては、カメラで撮ってみたり。大学の論文は、大阪の街・空堀をテーマに書きました。長屋をリノベーションして活用するなど、その当時から街づくりが面白くて。アーティストが街中に作品を展示して、訪れた人が地図を見ながら練り歩くイベントには、ボランティアスタッフとして参加しましたね」

場所は変わっても持ち続けた写真への想い


 就職は、建築技術者の派遣をしている会社に。
 「てっきり関西勤務と思っていたら、『あなたの勤務地は関東です』と言われてびっくり」

 地元尼崎を離れて、神奈川で住むことなった天野さん。CADオペレーターとしてやりがいのある仕事をしながらも、新たに始めたことが2つありました。
1つ目は、パソコンを習いだしたこと。
「イラストレーター、フォトショップが、趣味や仕事に生かせたらいいなと」
2つ目は、空の写真を毎日撮るようになったこと。


 「会社の事務所で働くというより、プロジェクトごとに建設現場に出向しての仕事が多かったんですが、現場って本当に何にもないんですよ。空しかない。でも、めちゃくちゃいい空に出会えた。だから、毎日、空の写真を撮ろうと決めたんです」

 CADオペレーターとして着実にキャリアを積んでいくなかで、「指示通りにこなす仕事ではなく、自分で物をつくりだす仕事がしたい」と感じるようになった天野さん。通っていたパソコン学校で「写真室」の求人を見つけたのは、ちょうどそんな時でした。


 「好きなものだと、心動くのが早くて。チャレンジしたいという思いの方が強くて、写真室への転職を決めました。実際に写真を撮影することはなかったんですが、お客様と打ち合わせやアルバム制作、婚礼をはじめとする撮影のアシスタントなど、勤務していた3年間は、忙しくも刺激的で幅広い経験ができました」

 そのころ、つきあっていたご主人とは、関西と関東の遠距離恋愛。結婚が決まり、天野さんの実家がある尼崎に住むことにしたのだとか。

尼崎で好きなものがつながり、自分の世界が広がっていく


 尼崎に住んでからは、パートとして働きつつも、写真を撮り続けていた天野さん。ある時、出産した友人のお祝いとして、赤ちゃんが生まれた日の空の写真に名前を入れてプレゼントしたら、すごく喜んでくれたのだそう。「ダイレクトに反応を見られるのが、うれしくて。空の写真を撮るだけではなく、作品にしていこうと思ったんです」

 知り合いなどに、作品を紹介するチラシを配るなか、「あままままるしぇ」というイベントに参加してみないか、と声が掛かります。「あままままるしぇ」とは、尼崎に住むママたちが出店するマルシェイベント。「自分の活動を、少しでも知ってもらいたい」と思っていた天野さんは、参加することにします。


 少しずつ活動していくなかで、また新たな動きがでてきます。それは、「尼ノ物書キ組」で、メンバーにカメラの基本を教える講座の依頼がきたこと。「最初は、引き受けるかどうか迷った」という天野さんも、やってみることに。「人に教えていると、私自身も気づきが多くて勉強になりました。何より、写真の楽しさを感じてもらえることが一番ですよね」

 「尼ノ物書キ組」では、講座のほか、取材に同行して撮影。「プロフィール写真などの撮影はしていましたが、本格的な取材は初めてで。最初は、かなり緊張しました。でも、自分の撮影したものが、ホームページにアップされる。成果となって見ることができる。本当にうれしくて!」

 尼崎に戻って1年。いつのまにか広がっていた世界。気がつけば、天野さんの周りには面白い人がたくさんいて、驚くほど知り合いも増えていました。

2人目の出産とこれからの暮らし


 2歳の長男、そして今年8月には2人目の赤ちゃんを出産しました。これから、目指していることはあるのでしょうか。

 「実は、『尼ノ物書キ組』で一緒に活動していたメンバーと、働く女性を応援するチーム『ココスキ』を立ち上げたばかり。今は子育てがあるので、どこまで活動できるかは未知数だけれど、自分のペースで関わっていきたいと思っています。あと、空の写真は毎日撮ります。これは、絶対死守(笑)」

 空を撮影するお決まりの場所は、自宅2階の大きな窓。ファインダーをのぞく顔が、とても幸せそう。環境が変わっても、自分らしくごきげんに暮らす。天野さんの世界は、尼崎でもっと広がっていくのでしょう。








(プロフィール)               

あまの・ゆか 1981年生まれ、尼崎市出身。フォトクリエイター。中学生のころから、本格的に写真に興味を持ち始め、フォトライフを楽しんでいる。空の写真を撮ることを日課とし、「Happy Colors PHOTOGRAPH(ハッピーカラーズ フォトグラフ)」では作家として「Birthday Skyフォト(バースデイスカイフォト)」などの作品を制作。2016年から「尼ノ物書キ組」で、写真の撮り方講座を担当。2017年、女性の生き方や働き方をサポートするチーム「ココスキ」の立ち上げメンバーとして活動している。