「ヨガ舞」「みんなとあなたがヨガする日」など、尼崎で数々のヨガプロジェクトを立ち上げている女性がいます。今回は、「楽しそうと思ったら、じっとしていられない性格。いつも言い出しっぺなんです」と柔らかい笑顔で話す吉識あゆ子さんをご紹介します。
ヨガで社会の役に立ちたい
2006年に立花町でヨガスタジオ「シャラプレマ」をオープンした吉識さん。スタジオでのレッスンが人気を集め、病院でのマタニティ向けや高齢者施設で入居者向け、企業では従業員や家族向けなど、さまざまな場での出張の依頼が増えていきました。ひとりでは対応しきれなくなった吉識さんは、ヨガ仲間に声をかけ仕事を分担することに。2016年には「一般社団法人日本ヨガのめぐみ協会」を設立し、現在は子育て中のママをメインに45人のインストラクターが所属するほどの大きな組織になりました。
「ヨガが美容健康に良いことはすでに多くの人に知ってもらっていますが、さらに地域のために役立てることがあるんじゃないかと思っています」と話す吉識さん。日本ヨガのめぐみ協会では「社会に役立つヨガ」をテーマに掲げ、健康寿命を長くすることや、子育て中の女性が活躍する場を作ること、またヨガイベントをきっかけに人とのつながりを作る活動をしています。
思いつきからはじまった尼崎の名所巡り
市制100周年の2016年には、尼崎の名所100ヶ所でヨガを舞う「ヨガ舞100ヶ所ふれあいめぐり」に挑戦。神社仏閣や公園、企業などで、市民の健康長寿祈願としてヨガを舞い、その場所のPRをすることで100周年を盛り上げました。「ラジオの生放送で来年の抱負を聞かれ、急に思いついてヨガ舞をすると言っちゃったんです。春秋の季節の良い半年ほどの期間で100ヶ所巡ったので、1日に3件はしごすることもありました」と当時を振り返って笑う吉識さん。
なかには、数十年ぶりに母校との再会もありました。母校の北難波小学校と梅花小学校が統合され難波の梅小学校が誕生した竣工式。オープニングで在校生を前に、子どもたちの健やかな成長と明るい未来を願ってお祝いの舞を披露したそう。
「ヨガ舞を奉納させてくれませんか?」と一件一件コンタクトを取るところからはじめたプロジェクトですが、新聞に取り上げられるなど話題を呼び、いつしか「うちにも来て!」と声がかかるほどになりました。まちなかで子どもに「ヨガ舞の人や!」と言われたときはやはり嬉しかったようです。このプロジェクトで出会った企業とは現在も関係が続き、社内のヨガ部に講師として呼ばれたり、吉識さん主催のイベントに協賛してもらったりと、ヨガ舞をきっかけに、尼崎のまちに知り合いがどんどんと増えていきました。
国際ヨガの日に森でヨガイベント
ヨガ舞プロジェクトを達成した翌年には、尼崎の森中央緑地でヨガのイベントをしてほしいと声がかかります。「国連が定めた6月21日の『国際ヨガの日』では、世界中の名所でいろんな催しが行われています。もし私が尼崎でイベントをするなら森しかないなと思っていた矢先に声がかかったので、二つ返事で引き受けました」。
2017年6月21日に開いた「あなたとなにかがヨガする日」(略して「あなヨガ」)では、尼崎の森中央緑地に120人が集まりました。目標は1000人で吉識さんが考えた鶴のポーズをして千羽鶴を作ること。めぐみ協会の出張先やヨガ仲間の生徒さんたちに声をかけ、イベントまでにフェイスブックで鶴のポーズをした写真を募集。当日集まった参加者を合わせて、見事1012羽の千羽鶴ができました。
その翌年に開催した第2回は、マルシェとミュージシャンのライブも楽しめるイベントに発展し、約2500人の参加者が集まるほどの大盛況ぶり。第3回は笑いヨガやトランポリンを使ったヨガなど12種類もの体験ブースを作り、家族で1日中楽しめるイベントになりました。しかし課題も残ったと話す吉識さん。「3年目はスタッフが減ったことで一人ひとりの負担が増えてしまいイベントを楽しめませんでした。たくさんの人と協力しなければ成り立たないと感じましたね」。これまでの反省を踏まえ、第4回の準備に取りかかっていた最中、2020年春、新型コロナウイルス感染症の流行が始まりました。
吉織さんは、「第4回はさらにバージョンアップして、ヨガはもちろんトランポリンやマルシェ、リレーマラソンなどを予定していました。クラウドファンディングの準備も進めていましたが、苦渋の決断で中止を決めました」と話しますが、吉識さんもスタッフのメンバーも、「次回は今回できなかった分も頑張ろう」とモチベーションは保てているといいます。
こんなときこそヨガをしてほしい
次々とプロジェクトを立ち上げ、人を巻き込みながら成功させてきた吉識さん。「こんなことをしたいと相談したら、人を紹介してもらえてどんどん繋がっていく。1人じゃできないけれど、支えてくれる周りの人がいて現実になっていくんです。尼崎のお世話好きな気質がそうさせるんですかね」と目を輝かせます。尼崎で生まれ、尼崎に根を下ろして住み続け、これまでに積み重ねてきた人脈を持つ吉識さんだからこそ、協力してくれる人が集まっていくのだと感じます。
4月からは「家にこもっている自粛期間こそ、ヨガが必要だと思ったんです」とオンラインでのヨガ教室も始めました。高齢者施設にzoomをつなぎ、月2回のペースでレッスンを再開。はじめは戸惑っていた高齢者も、今では難なくヨガができているそう。「こんな機会でもなかったらオンラインで教室をすることはなかったですが、YouTubeなどをきっかけにシャラプレマやヨガのめぐみ協会を知ってくれたら嬉しいです。これからもリアルとオンラインを平行して活動を続けたいと思っています」と有事のときでも明るく前向きに、ヨガを介して笑顔をおすそわけしています。
(プロフィール)
よしき・あゆこ 尼崎市出身。空港グランドスタッフやエステサロン、リサイクルブティック経営を経て、現在のヨガスタジオ「シャラプレマ」をオープン。シャラプレマではヨガ教室を行い、ヨガのめぐみ協会では代表理事として法人運営や事務を担っている。
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