第26回みんなの尼崎大学オープンキャンパス「尼崎の農業を掘って食べる日」

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 11月21日(土)は、尼崎の北東部にある「園北ファーム」を訪れてオープンキャンパスを開きました。よく晴れた秋の一日に田能の里芋を掘って、里芋を使った「のっぺい汁」を試食した様子をご紹介します。

田能の里芋を収穫しよう!

 田能資料館にほど近い場所にある「園北ファーム」。猪名寺自治会長などを務める内田大造さんが2018年から地域の人に畑を借りてスタートしました。現在は年間を通して季節野菜を栽培。近隣の小学校や幼稚園、福祉施設の体験を受け入れるなど、地域のコミュニティファームとして運営されています。


園北ファームの名村さんに掘り方を教えてもらう参加者

 ちょうど11月頃は里芋の収穫時期ということで、里芋堀りを体験させてもらうことに。大きな鍬で里芋の株を掘り起こしたら、土を落として種芋の周りについた里芋をちぎって収穫します。子どもたちは土の中から出てきたミミズに興味津々。大人は鍬を振る難しさに苦戦しながらも夢中になっていました。


たくさんの里芋を収穫できました!

園北ファームの特色ある4つの畑

 収穫体験のあとは、園北ファームの成り立ちについて内田さんからお聞きしました。内田さんは会社員として労働運動に力を入れていましたが、挫折したときに農業に出会い、野菜が育っていく姿に感動し、また、収穫祭にたくさんの人が集まり楽しそうにしている姿に感銘を受けたと言います。「半農半X」に影響を受けた内田さんは、それから猪名川町で畑を借りて農業を始め、三度も水害に遭うも、知人の声かけもあり、現在の場所に畑を移したのだとか。地域の人や農業に興味のある人、また認知症の人を受け入れて一緒に農作業をしています。「はじめは農業が好きだったわけではありませんが、農あるまちづくりとして今はいろんな人と関わりができることが一番ですね」と内田さん。


説明をする内田さん。2018年に園北ファームをスタートしました

 さらに園北ファームでは4つの畑でそれぞれ特色の異なる活動をしているということで、第2から第4ファームのみなさんにもお話を聞きました。まずは第2ファームでい草を育てる長澤一徳さん。長澤さんは伊丹市で畳屋を営みながら「遊畳会(ゆうじょうかい)」の代表として、日本最古の畳「御床(ごしょう)」の再現を目標に日本の畳文化の啓蒙活動をしています。猪名寺自治会が行うイベントで内田さんと出会ったことがきっかけで、畑を借りて畳の材料となるい草と真菰(まこも)を栽培しているそう。


編まれたい草を手に説明する長澤さん

第3ファームで団塊世代出番塾として活動する中村さん

 第3ファームで活動するのは「団塊世代出番塾」の中村昇さん。団塊世代出番塾とは、昭和22年から25年に生まれた「団塊の世代」が集まり、地域貢献できないかとはじまった活動です。農作放棄地を減らし都市農地の再生を目標に2019年から里芋作りを行っているそう。
 「一年間の経験を経て、団塊世代以外の若い世代にも助けてもらわないとと実感しました。」と話します。


自然農に取り組む第4ファームの大岸さん

 第4ファームで活動するのは大岸靖則さん。10年ほど前から農薬や化学肥料、動物性堆肥を使わずに、雑草を敷き詰めて米ぬかを撒く自然農法を実践してきたそう。自分で作った野菜を食べているうちに家族の花粉症やアトピーが治まってきたという体験談を話します。そんな大岸さんを中心に、2020年6月から「みんなの畑」をスタート。学生や地域の人が集まり、農作業はもちろん、畑の端で井戸を掘ったりピザ釜を作ったりと、それぞれがやってみたいことを実現する場になっています。


畑にイスを並べてお話を聞きました

 そんな特色の異なる4つの畑で活動するみなさんに、「尼崎で農業をする楽しさ、難しさは何ですか?」と質問してみました。すると、都市部以外での農業経験がある大岸さんと長澤さんからは「マムシやスズメバチ、鹿などの鳥獣被害がないところが良い」との答えが。
 内田さんからは、住宅や工場の近くに畑があることで「地域に見られている」という難しさがあるとのコメントが。農業を行う・行わない、農業を生業とする・生業としないなど、それぞれ考え方が違う中で折り合いを付けながら農業に取り組んでいる様子がうかがえます。
 一方で、「都市の中で農業ができることにより広がる可能性は大きいです。どんな人でも畑ではできること、役割がある。青空の下での作業は、多様な人が関わることができる開かれたコミュニティの場になります」と内田さん。


育成調理師専門学校の生徒さんが料理の説明をしてくれました

 その後は、みなさんお待ちかねの昼食タイム。今回は地元尼崎市の育成調理師専門学校の高校生が、事前に収穫した里芋や畑の食材を使ったメニューを考え、調理してくれました。のっぺい汁を食べた参加者から「こんなに味のしっかりした里芋は初めて。とても美味しいです!」と喜びの声がありました。
 実は、オープンキャンパスの直前に、全国高校生食育王大会に出場していたみなさん。田能の里芋を使った「地域のお悩み解決レシピ」を実食プレゼンした結果、なんと特別賞「日本料理アカデミー賞」を受賞したそう。大会と重なり大忙しの中、園北ファームに足を運びながら準備を進めてくれたみなさんのおかげで、笑顔があふれるお昼休みとなりました。


素材の味を活かした里芋ののっぺい汁と韓国風巻きずし

昼食後には、畑の野菜を自分で収穫して購入できる直売会も

 午後からは第2部として、第2から第4の畑を見学するファームツアーを開催。それぞれの畑を実際に見ながら、より詳しいお話を聞きました。


水田から畑に転用した土地は水はけが悪く、里芋が思うように育たなかったそう

第2ファームで説明をする長澤さん。来年度からは第3ファームに移転するそう

 14時頃にお開きとなりましたが、屋外の空気と慣れない畑仕事で、身体はすっかり一日外で遊んだ後の心地いい疲労感に包まれました。
 園北ファームでは、どの畑でもお手伝いの人手を募集しているとのこと。子どもに土に触れる機会を作りたいと感じている人や、自分で育てた野菜を食べたいという人はぜひ参加してみてくださいね。第1ファームは月、水、金曜を作業日に(9時~15時はたいてい内田さんがいますとのこと)、第4ファームは第4土曜を活動日にしているとのことです。
※畑の住所
第1ファーム 尼崎市田能6-8-24
第4ファーム 伊丹市口酒井2-4

 最後に内田さんから大ニュースの発表。
 みんなの尼崎大学には「海洋学部」や「商学部」など、学生が自ら学部を立ち上げさまざまな活動をしていますが、園北ファームも今回のオープンキャンパスをきっかけに「農学部」を立ち上げることに! 来年度から本格始動するとのことですので、そちらもお楽しみに。