2024年3月8日(金)。記念すべき第40回となるみんなの尼崎大学オープンキャンパス「ちいきいと モダニズム編」を開催しました。神戸発の写真大喜利イベント「ちいきいと」から盃をもらい、 尼崎の地で開かれる本イベントは今回で実に4回目。各地域の威信をかけた地域人たちの熱き戦いの模様をレポートします。
ちいきいと=「ちいき」対抗の写真大喜利大会
「ちいきいと」とは、”神戸発、地域と地域が互いのプライドをかけてシノギを削るジモト系非暴力抗争頂上決戦(ちいきいと公式HPより抜粋)”のこと。
「なにやら穏やかではなさそう……」と感じた方、ご安心ください。実際は地元愛という闘志を写真とトークにぶつけて、地域の魅力を再発見しようと発案されたイベントなんです。
ルールはいたって簡単。3名の登壇者は、地域の代表としてテーマに沿った写真を用意しプレ ゼンします。決められたテーマにマッチした写真と、観客を納得させるトークをいかに展開するかが勝負のカギとなります。
ただし明確に勝敗や優劣をつけることは御法度。「誰が勝ったかはお客さんの反応をみてなんと なく察してください。」と、司会を務める若狭氏の説明からイベントがスタートします。
今回の会場となったのは、旧尼崎紡績本館事務所「ユニチカ記念館」。その歴史はかなり古く、なんと建てられたのは今から100年以上前の1900年にまでさかのぼります。
当時は、建物の周囲に大規模な工場が立ち並んでいたものの、戦時の空襲によってほぼ全焼。旧本社事務所だけが偶然にも残ったのだそうです。
工業都市尼崎が始まったルーツである旧事務所は、2019年まではユニチカ記念館として一般公開していたものの、老朽化に伴い一度は閉館。その後、尼崎市に寄贈されたことをきっかけに2023年12月に建物内の大掃除を敢行。せっかく綺麗にした「ユニチカ記念館」でイベ ントをしてみたい、と今回の「ちいきいと」開催に至りました。
尼崎 vs 宝塚 vs 西淀川
左から、尼崎代表の武庫之荘で「DIY BOOKS」オーナーを務める平田提(だい)さん、大阪の西淀川代表で西淀川の魅力を発信するローカルウェブサイト「メイドインニシヨド」や地域コミュニティ「ニシヨド編集部」を主宰する藤原武志さん、メディアピクニックを主宰し本家「ちいきいと」 の司会を務める宝塚代表の岩淵拓郎さんの3名。
トークバトルのテーマは、会場のユニチカ記念館にちなんで「モダニズム」に。用意された8つのお題は「パーマネント」「ライスカレー」果ては「デモクラシー」など、日常ではほとんど使うことのないちょっと難しめなワードばかりが並びます。
そんなちょっと無茶ぶり感のあるお題に、出場者の3名は果敢にトークを展開していきます。まずは「ダンスホール」のお題で登場したこの写真。
「今回の発表でイベント後には宝塚にぜひ移住したいと言う方も出てくるはずです。だから、発表も兼ねて物件をご紹介したいと思います。それではお手元の資料をご覧ください。」(岩淵さん)
配布資料を見ると、確かに一枚だけ物件のチラシが紛れ込んでいました。「なんのプレゼンやね ん」という笑い声が会場から上がるなか、移住先を紹介する岩淵さんの営業トークは止まりません。
「この物件は築32年なんですが、リビングの丸さを見てください。ダンスホールそっくりでしょ。しかもこのリビングは吹き抜けになっていてダンスホールっぽい柱もあります。ほかの部屋も楽屋とし てご利用いただけますよ。」(岩淵さん)
するとここで「ダンスホールのホールは丸くない」という衝撃的な指摘が桃谷さんから。
会場からは「真面目に突っ込むんかい」と大きな笑いが起き、なぜか本来いないはずのジャッジ の突然の登場が、出場者のプレゼンと歴史的事実の融合、つまりユーモアも学びもあってもっとオモロイ「ちいきいと」になっていきます。
しかし、ジャッジに怯えることなく「これは絶対に勝った!」と奮い立ったのは、西淀川代表の藤原 さん。
「この写真は地下を走るJR東西線の御幣島駅につながる地下構内の写真です。この柱も天井の明かりの感じもダンスホールそのもの。それにモダニズム=地下鉄みたいな側面もあるじゃないですか。君たち(尼崎や宝塚)にはこんな地下空間はないんじゃないですか。」(藤原さん)
「おぉ」という感嘆の声が会場から漏れるなか、ジャッジ桃谷さんがマイクを握ります。
「目の付け所が非常によろしいと思います。地下鉄=モダニズムという捉え方はその通りで。御堂筋線の外観や作りなどからもわかるように、地下鉄はモダニズムの結晶といえます。」 (桃谷さん)
「よし!」と喜びのガッツポーズは藤原さん。なんでもこの写真を撮るために二度足を運んだのだそう。出場者のプレゼンひとつで「そんな考え方があるのか」と日常の風景で新鮮な気持ちになれるのも「ちいきいと」の魅力のひとつ。
続いて、「パーマネント」のお題でホーム・尼崎代表の平田さんが出したのはこの写真。
「これは西武庫之荘公園にある木なんですけど。『パーマネント』って意味を調べてみると『癖がついて変わらないこと』を意味してるんです。見てください。めちゃくちゃ癖ついてるでしょ。それに倒れてもなお上に向かって枝が生え出してるんですよ。古い細胞と新しい細胞が入り混じってるのもモダニ ズム感があってそこもまたいいですよね。」(平田さん)
ユーモア満載の切り口で、最後には「そっか」と納得してしまうのが平田さんの真骨頂。一見、「倒れちゃってるなぁ」とちょっぴり悲しくなる風景もおもしろがりながら、出場者の地元愛溢れるトーク は続きます。
また「和洋折衷」のお題では宝塚からはこんな写真が。
「これらは宝塚にあるスイーツ屋さんの商品なんです。真ん中はいづみや本舗さんのフルールレビュー大福というコロナ禍で新開発されたもので、宝塚歌劇団のレビュー感が大福で表現されています。使われているフルーツは宝塚歌劇団の組数と同じ5種類!フルーツをスポンジと生ク リームで巻いたものを、あんこで巻いて、さらにそれを求肥(ぎゅうひ)で巻いて……。こんなの和洋折衷以外の何ものでもないでしょう?」(岩淵さん)
このプレゼンには「宝塚さんはやはり持ってるものが違いますね」とジャッジの桃谷さんもこのコメ ント。しかし、一度にたくさんの甘味を味わった代償が、次の日に痛風となって現れた岩淵さん に、会場からはこの日一番の大爆笑。
そんなこんなで8つあったトークテーマも終わってみればあっという間。イベントを通して地域の持つ力というか、なんというか。「そこにあることが当たり前なもの」のチカラをまざまざと見せつけられた気がしました。観客席からはイベントを通して「なるほどな〜」「へー」とうなる声も多く聞こえ、 学びの多い時間となりました。
令和5度のオープンキャンパスは、今回で全て終了となりました。一年間、市内のさまざまな場所で、多種多様な学びを企画しましたがいかがでしたか?
令和6年度も面白い企画を考えていますので、お楽しみに! 詳細が決まり次第みんなの尼崎大学のSNSなどで告知しますので、ぜひチェックしてみてくださいね。