阪急武庫之荘駅から南東に徒歩10分ほど、住宅が密集するエリアの角地に、緑色のひさしが付いた小窓の横に「クレープのお店まつばさん」と小さな看板が掛かった一軒の家があります。
ここは、この住宅で暮らす須佐美寛子さんが毎週金曜、午後の3時間だけ自宅の窓越しに開くクレープ屋さん。週1回の営業時間には、学校を終えた近所の小学生たちがおこづかいを握りしめ「いつものクレープちょうだい!」と元気にやってきます。
見つけた!私の理想の場所
尼崎の立花で生まれ育った須佐美寛子さんは、21歳の頃、実家近くで両親が営んでいた飲食店を改装し、「クレープのお店まつばさん」を始めました。子どもの頃から自分で作って友だちに振舞っていたという、根っからのクレープ好きだったそう。
結婚を機に、住む家を建てそこでクレープ屋さんも開きたい、と夢に向かって動き始めます。家族がアレルギー持ちだったため、自然素材の住宅を目指しました。須佐美さんは、自分の思い描く理想の住宅を建ててくれる建築家を探し出し、同時に自ら予算に合う宅地探しも行いました。夫は武庫之荘出身なので、両方の実家に近いエリアを歩き回り「まさに足で探して」巡り合ったのが今の場所でした。当時は古家が建っていましたが、南東の角地で明るい日差しが当たっていたことから「この場所なら理想の家が建てられる」と直感したといいます。
小さな住まいの自慢の草屋根
須佐美さん宅は、12坪の狭小地に建つ2階建て。1LDKにロフト付きで、ロフトには天窓があり、断熱効果を持つ草屋根に登れるようになっています。二人の子どもとともに、草屋根に登って、星空観察やお月見をしたり、花火大会を見物したり。「初日の出を家族で見たときは本当に感動でした」と教えてくれたのは中学生の娘さん。数々の家族の楽しい出来事がこの家には詰まっています。
ご近所さんにも支えられて
この場所に住み始めた当初から自治会にも加入し、近所の公園で開かれるラジオ体操に参加したり、バレンタインには子どもとチョコを配ったりと、ご近所づきあいを深めてきました。
「ご近所の人には子どもが小さい頃から良くしてもらって。今、息子は中学生ですが、自宅横で野球バットの素振りしていたら『頑張ってるねー』と声かけてもらうこともあります」と話す須佐美さん。
クレープ屋さんの営業日に、窓を開けていると、いろんな人に声をかけてもらうことがあるそう。一人で営業している須佐美さんに代わって、注文待ちの子ども同士がメニューの説明をしたり、注文を聞いてくれたり。また通りがかりのご近所の人が「いっつも大変やなー」と、来店客の自転車の整列をしてくれたりと、「クレープのお店まつばさん」の周りには子どもから大人までおせっかいな人であふれている様子がうかがえます。
「人の優しさを感じることのできる尼崎でお店をできて良かったと感じる瞬間でもあります」
迷いながらも見つけたい、こだわりのクレープ屋さん
お店の場所としては少々分かりづらさもありますが、むしろそんな場所をわざわざ探して来てくれるのが嬉しいと語る須佐美さん。住宅街のため、これ以上営業日を増やすことは考えていないそうですが、週一の営業日以外は、知り合いの飲食店や雑貨店での出張販売も行っていて「クレープのお店まつばさん」のファンの輪は広がり続けています。
理想の住まいで子育てをしながら「ちょうどいいバランス」で続けてきた「クレープのお店まつばさん」には、今週もまたご近所の子どもや大人たちが、須佐美さんの柔らかな笑顔とこだわりのクレープを求めてやってくることでしょう。
※自宅のため住所は非公開ですが、Instagramで開店情報をチェックできます。
Instagram:matsuba3san
クレープのお店まつばさん「心と体に優しいおやつ ぺこぺこのお腹をご持参ください。」