ICTを取り入れた「子どもたちが作る新しい授業」

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社会科の授業の様子

 全国どこの学校でも一定の教育基準が保てるように作られた「学習指導要領」改訂のひとつとして情報活用能力の育成がうたわれており、色んな授業でパソコンやタブレットを使ったICTを活用した教育が加わりました。全国の学校でICTを活用した教育の導入が始まっていますが、尼崎でも、国語科や社会科などの各教科にICT端末を取り入れている学校があると聞き、下坂部小学校の授業にお邪魔してきました。

子どもたちが進める授業のかたち


タブレットを使った社会科の授業

 下坂部小学校の5、6年生の社会科の授業では、教科書と併用して「ロイロノート・スクール」というアプリを使っています。「ロイロノート・スクール」は、パワーポイントで資料を作るように白紙のページに文字を打ち込んだり、画像を挿入したりと自由自在にノートを作ることができるアプリ。作ったノートはクラス全員と瞬時に共有することができ、みんなの意見を手元のタブレットで見たり、教室前方に置かれている大きなパソコンモニターに映し出して発表したりと、これまでにない方法で自分の意見を述べることができます。


社会科の授業の様子

 取材時の6年生の授業は、江戸時代の終わりに結んだ日米修好通商条約について。この日はノルマントン号事件を掘り下げて学びます。前回の授業の振り返りをした後、「まずはノルマントン号事件について調べたことを書いてみましょう。7分でノートを作ってみてください」と担当の宮里先生が声をかけると、子どもたちたちは教科書やグーグルで調べたことをそれぞれのロイロノートにまとめていきます。静かな教室にキーボードを打つカタカタという音だけが響いて、まるでオフィスにいるような感覚に。ICT活用推進を担当する兒玉先生は、「ロイロノートを使った授業を始めてから、教科書と資料集だけでなくインターネット上にある膨大なデータの中から、自分が求めている情報を見つける力が格段に上がったと感じます」と子どもたちの情報処理能力が向上したと話します。


社会科の授業の様子

 ロイロノートにまとめ終わると、クラス全体で共有します。先生が指名した子どもたちは、前に出て自分の作ったロイロノートを見ながら発表。その横では、先生がホワイトボードに要点を書き留めていきます。先生は、より詳しく調べている子どもや様々な視点で調べたりまとめたりしている子どもたちを順番に指名しながら学びを深めます。これまでの授業は教科書に沿って先生の説明を中心に進んでいきますが、ロイロノートを使うことで子どもたちの発表を軸に授業が展開していきます。発表を聞いている子どもたちは、紙の教科書やノートでは得られない刺激や気づきがあるといいます。今回は、ノルマントン号事件を調べるなかで「日米修好通商条約では日本で罪を犯した外国人を日本の法律で裁くことができなかった」という答えを子どもたち自ら導き出すことができました。

インプットとアウトプットで成績アップ


左からICT活用推進を担当する兒玉先生と社会科を担当する宮里先生

 下坂部小学校でロイロノートの導入が始まったのは、2020年8月のこと。兒玉先生が教育委員会主催の「ICT活用研究部会」でこのアプリと出会ったことがきっかけです。「プログラミングの授業だけでなく、国語科や社会科などの各教科にもICT技術を導入することが推奨されているので、社会科を担当する宮里先生に相談し実施することになりました」と当初を振り返ります。


ホワイトボードを使って説明する宮里先生

 社会科の授業を行う宮里先生は「パソコンを使った授業に慣れていないので最初はハードルが高かったですが、兒玉先生からこれまでの授業準備と変わらずに導入できると聞きました。これなら受け身の授業から、子どもたちが主体的に参加する授業に変えられるのではと思って」と挑戦を決めたといいます。ICTを使った授業では今まで以上に自分の意見を話す機会が増えるので、人前で発表することが苦手な子どもたちも克服できたといいます。


タブレットを使う子どもたち

 自分で調べたことをロイロノートにまとめるというインプットとアウトプットを繰り返すことで、アプリ導入前よりも社会科の成績が上がったそう。自宅のパソコンでログインし、自ら小テストを作ってくる子どもたちもいるというから驚きです。実際に授業を受ける子どもたちからは「ロイロノートを使った授業は、みんなの意見を聞けるので楽しいです。他の県の人も関わって勉強したり、一緒に宿題したりできるようになったらいいなと思います」との声や「他の授業でもロイロノートを使いたいです」など大好評。

 現在は下坂部小学校で先行した授業が実施されていますが、兒玉先生が市内へ研修に出向くことで、他校でも少しずつロイロノートの活用が進められています。2020年度は尼崎の小学校の子どもたち1人に1台ずつタブレットの配布が決定していることもあり、ますますICTを活用した授業に期待が高まります。



コンピュータ室の看板

コンピュータ室の内観

社会科の授業の様子

写真、教科書を読む子どもたち

写真、社会科の授業の様子

写真、タブレットで写真を取る子どもたち