
みなさんは、フリースクールという学校をご存じでしょうか。学校以外の学びの場の選択肢として、最近は尼崎市内に次々と誕生しています。
今回のみんなの尼崎大学オープンキャンパスでは、学校以外の選択肢であるフリースクールの学びについて、「ぐるりミライスクール」へ体験入学し、これからの学びについてみんなで考えます。
体験入学スタート!
集合場所は、西武庫公園内(通称:交通公園)のゆめハウス。公園内の武庫健康ふれあい体育館の隣にあります。この日は、小学校低学年から中学2年生までの15人ほどの子どもたちがぐるりミライスクールで過ごしていました。公園でボール遊びをしている子やゆめハウスで勉強をしている子、お弁当を食べている子など、子どもたちそれぞれが思い思いの時間を楽しんでいました。
参加者の方々が集まり、体験入学がスタート。まずは、参加者である大人たちが先輩たち(子どもたち)に挨拶をするところからです。名前や普段していること、得意なことなど、順番に自己紹介をしました。次は、先輩たち(子どもたち)の番です。「野球が好きです」「BMXをしています!」など、好きなこと・得意なことをたくさん教えてくれました。最後は、ぐるりミライスクールを運営されてる荻さん、小田さん、川端さん、さらに、よくお手伝いをしているという保護者の方にもお話していただきました。ここでは、大人たちのことを「先生」とは呼びません。理由は、ひととして同じ目線で会話することを大切にしているからだといいます。では、ぐるりミライスクールの大人たちはなんと呼ばれているのか、呼び名が気になるところです。創設初期からの運営メンバーの荻さんは、子どもたちに「オギ」と呼ばれていました。まさかの呼び捨て!


まずは学びを体験。「トライ」をやってみよう!
ぐるりミライスクールには、子どもたちが自分で考え、自分で選び、自分で学ぶ力を育むための「トライ」というスクールプログラムがあります。フリースクールって何なのか?どのような学びの機会があるのか?について説明してもらう前に、まずは「トライ」を体験して、子どもたちが普段どのように学んでいるのかを知ります。今回のテーマは「マルチタスク」。一見難しそうなテーマですが、スマートフォンやパソコンなどが普及している現代社会では、音楽を聴きながら勉強をしたり、テレビを見ながらご飯を食べたり、日常の中にマルチタスクがたくさんあります。子どもも大人も関係なく、身近なテーマである「マルチタスク」について、教えてくれるのは荻さんです。

まずは、スライドに聖徳太子の画像が映し出されました。聖徳太子といえば、同時に10人の話を聞き分けられたことで有名ですが、考えてみれば、これもマルチタスクです。「10人も聞き分けられるの?」という会話が生まれる中、実際にやってみないと聖徳太子のすごさが分からないということで、聖徳太子流のマルチタスクを実践します。大人たち10人がそれぞれ短い単語を一斉に言い、子どもたちが聞こえてきた単語を答えます。子どもたちは4.5人のグループに分かれ、聞き取れた単語を紙に書いていきます。各グループ2.3個の単語を書いていましたが、子どもたちが当てられたのは1単語だけでした。早速、マルチタスクの難しさを体感します。
続いて、聖徳太子について学びます。聖徳太子は、法隆寺を建てたこと、日本初の憲法をつくったこと、中国との交流などで有名な人物です。「十七条憲法をchatGPTで現代の言葉に直してみました!」と、荻さんがスライドに映したのは1から17までの言葉。
「1.なかよくすることがいちばんたいせつ」「5.いいこととわるいことを、よく考えて見わけよう」「10.まちがえても、ゆるしあう気もちをたいせつに」「17.なにかを決めるときは、みんなでよく話し合おう」など、今でも大切なことが1400年前に憲法になっていたことに、子どもも大人もびっくり。

学びを深めたあとは、もう一度マルチタスク実践タイム。荻さんがお題を言い、お題の絵を紙に描きながら、グループに分かれてしりとりをします。「花火!」「運動会!」と、次々お題が投げられますが、しりとりに集中すると絵が描けません。でも、絵に集中するとしりとりができない…。またまたマルチタスクの難しさを体感します。では、絵を描いてからしりとりをしてみたらどうでしょうか。打って変わって、絵がスラスラと描けます!荻さんは先ほどの2倍の速さでお題を言っていたそうですが、全く気がつきませんでした。

最後は、「言うこと一緒やること逆」ゲームをしました。「右」と言われたら「右」と言いながら左へジャンプする、間違えたひとから脱落していくというゲームです。向かい合わせで2列に並び、ゲーム開始。やってみると意外と難しい!

これにて「トライ」は終了。手や体を動かしながら、「人間の脳は同時にたくさんのことをするのが苦手」ということを、体感して学ぶことができました。
ぐるりミライスクールについて知ろう。
「トライ」が終わり、みんなでお昼ごはんを食べたり、公園でサッカーやモルックをして遊んだりしたあとは、新しい拠点へ移動します。「校舎がほしい!」という子どもたちの想いから、クラウドファンディングで約300万円を集め、空き家をリノベーションし、子どもたちとDIYをしながらつくったといいます。

ここからは、創設初期からのメンバーである小田さんと司会進行の若狭さんによるトークセッション形式で、ぐるりミライスクール設立の背景や、小田さんの想い、尼崎のフリースクール事情についてお聞きします。

まずは若狭さんから、「元々のキャリアは?なぜ学校を始めたんですか?」という質問が。「元々は洋服のデザインをしていましたが、安い服が広がったときに疲労感を感じて独立しました。その後子どもが生まれ、子育てをする中で、社会から取り残されていく感覚がありました。なぜ人と比べてしまうんだろう?人と比べてしまうような教育で、社会は豊かになるのだろうか?と思いました。そして、自分への探求の時間があったら良いのではないかと思い、『学校をつくろう!』となりました」と話す小田さん。社会から離れたときに感じたもやもや感が、最初のきっかけだといいます。小田さんの行動力に驚きながら、想いをさらに深掘りします。
小田さん「ぐるりミライスクールは、不登校の子のための場所というよりも多様な学びの場です。わたし自身が探求したいと思っているから、大人も子どもも関係ない。偏りなく、常に中間でいたいと思っています。子どもたちにとって、大人の影響はとても大きいです。だから、なるべく価値観を押しつけないようにしています」。小田さんの熱意に、参加者のみなさんも胸を打たれた様子。
話題は、尼崎市のフリースクールについてのお話に。尼崎市では、通学による学習で一定の要件を満たすと出席扱いとすることができるフリースクールなどの民間支援施設を、教育委員会で認めています。市内では、尼崎フリースクール合同支援者の会主催のフリースクール合同説明会が開催されており、みんなで業界を盛り上げようという雰囲気があるそうです。
トークセッションの後は、参加者の方々に感想や質問をお聞きしました。「子どもたちの目がキラキラしていた。お昼ごはんを食べているときもたくさん話かけてくれて嬉しかった」「選択肢を増やしたいという想いに共感した」「学校へ行けないのではなく、行かない選択をしているんだと気づけて良かった」など、みなさん新しい発見や気づきがたくさんあった様子。

参加者の中には元教員の方もいらっしゃいました。ぐるりミライスクールのあり方に感銘を受け、最近お手伝いをはじめたそうです。
みんなの尼崎大学オープンキャンパスvol.47「フリースクールってなんだ?」はこれにて終了。主体的な学びを体験し、ぐるりミライスクールの魅力を肌で感じることができました。
当日の様子をダイジェスト動画でも紹介していますので、そちらもぜひご確認ください!