哲学談話ってなんやねん。哲学対話じゃないんかい。という声が聞こえてきそうですが、みんなの尼崎大学では、今年度より新しい取り組みとして哲学談話をスタートさせています。哲学談話という用語はわたしたちオリジナルの言葉(たぶん、きっと)。哲学対話とかなり似ていますが、談話なので楽しく話すことをより重視しています。
どうして哲学談話?と思われるかもしれませんが、地域でさまざまな活動をしていくときには、必ずと言っていいほどいろいろな価値観や考え方に出合います。どれが正解かわからないし、どれも正解のように見える。その中で必要なのは、異なる意見やアイデア、立場や価値観をどううまく扱うか?というスキルです。みんなの談話室(哲学談話)は、楽しく哲学談話を実践しつつ、その技術を学ぶのが裏の目的です。

※前回の記事はこちら
今回のみんなの談話室(哲学談話)のテーマは「友達の家に手土産はいるのか?」。ううむ、前回のテーマが「純愛」だっただけに落差というかなんというかを感じますが、さまざまなテーマを優劣なく扱うことができるのが哲学談話のいいところでもあります(初回で哲学者の谷川さんがおっしゃっていたような気がします)。
そんなこんなでいつも通り、自己紹介と近況報告からスタート。「夏に娘とディズニーランドに行ってハマってしまったので、今度はシーに行く計画を立てている」「セミが大嫌いだがこの夏にはあまり出会っていない、うれしい」「尼崎出身の有名な俳優のお墓を探す旅をした」など、それぞれの夏の思い出を垣間見る時間から。この日はいつもよりちょっと少ない6名の参加でした。

まずはそれぞれがテーマに対して感じていることを共有。
「相手が喜んでくれるので必ず持っていく」
「友人以外の人が家にいるかどうかが重要(他の人がいる場合は持っていく)」
「自分が食べたいものを持っていく」
「手土産持っていくかどうか考えている時点で友達ではない」
「あまり自分では持っていかないが持って来なかったら気になる」
など、それぞれの友達の概念、手土産に対する想いを確認しました。もうすでにこの時点で、友達とは?手土産とは?について、それぞれの視点の違いが浮かび上がってきています。
まず、そもそも手土産はその友達のために持っていっているのか?いや、実はむしろ自分のためにこそ持っていっているのではないか?という話が展開されます。

「手土産を持っていくことで、自分は手土産をきちんと持っていくような常識的な人間であるということを証明しようとしているのかもしれない。しかもそれは、友達に対してだけではなく、友達の親や同居人に対して行っているものでもあるのかもしれない」
その話を受けて、別の人が返します。
「子ども時代、友達の家に遊びに行く時、親に手土産を持たされた。あれはなんだったんだろう。もしかすると、自分の意思とは異なるところで繰り広げられていた親たちの手土産の『空中戦』だったんじゃないか」
どうやらメンツや体裁のようなものは、やはり手土産とは切っても切れないのかもしれません。話はさらに広がっていきます。
「手土産自体にはそこまで意味はないのではないか。なにかをやりとりするという行為自体に意味があるのであって、贈られたモノにフォーカスするとその行為の本当の価値が消え去ってしまう。手土産を選んで持ってきてくれている、その想いにフォーカスすると自然と感謝が浮かび上がってくるのではないか」

そんな中、みなさんとの談話の中で「手土産真空説」というコンセプトに行き当たりました。モノ自体には価値がなく、その行為にこそ意味がある、というのがその概念のことです。筆者の記憶を辿ると、どこかの民族がそんな贈与コミュニケーションをしていたような、、
「一方で、残らないモノを手土産で持って来られると少し辛い。どれくらい想いを込めてもらったとしても」という話や「手ぶらでいいよと言われるのが逆に大きなプレッシャーになる。仲が良ければ良いほどになにかを試されているんじゃないか、と勘繰ってしまう」という難しさも語られました。
最後に、とある参加者が
「自分は好きなものが『たべっ子どうぶつ』であると公言していて、それゆえにかなり多くの人がたべっ子どうぶつを持ってきてくれる。でも、その結果たべっ子どうぶつがかなり家や事務所に増え、少し困っている。みなさんからの想いや配慮は感じるのだが、とりあえずたべっ子どうぶつを持っていけばいいだろうというような考えが見え透くような瞬間もあって、どうなんだろうと思っている」

という非常に礼を失した発言もありました。はい。他でもない筆者の発言です。本当に申し訳ございません。モノではなく、みなさんの想いや気持ちにしっかりフォーカスしなければならない、と痛感した哲学談話の時間でした。今後とも精進していければ、と思います。どうぞよろしくお願いいたします。
参加者のみなさんからも「持っていかないといけないと思っていたけど、今日の話を通して手土産を持っていきたい気持ちがあるということに気がついた」という話や「どんな手土産をもらっても喜べる自分でありたい」という宣言なども。
扱い切れないほどにいろいろな話題が出た今回のみんなの談話室(哲学談話)。次回は少し先の11月12日(水)に開催します。テーマは「人生半分損してるって何なん?」。ぜひご参加ください。
9月は、10日(水)に「みんなの相談室」を開催します。こちらも、お気軽にお越しください!