尼崎のママの出産と育児をサポートする「産後ケア」

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赤ちゃんをだっこしてあやす母親

 産後のお母さんにとって、慣れない子育てや自身の体調など、不安になることはたくさんあります。そんなお母さんを心身ともにサポートする「産後ケア」事業。尼崎では医療機関や助産院などと連携したサービスが充実しつつあります。

 さらに安心して子どもを出産し育てられる環境を目指す尼崎市。今年から新たな事業を始めた保健所健康増進課の母子健康担当を訪ね、お話を聞きました。

オンライン申請で宿泊できる「産後ケア」が登場


令和5年からミッフィーデザインになった母子健康手帳を持つ石﨑さん

 尼崎市では希望があれば、助産師が自宅を訪問し、授乳の悩みなどの育児のアドバイスやお母さんの心身の相談にのる「産後ケア」をこれまでも実施してきました。しかし、利用者からは医療機関や助産院といった施設に宿泊や通所できるサービスへのリクエストが寄せられていたといいます。今年7月、これまでの「訪問型」に加え、「宿泊型」と「通所型」のサービスを始めました。

 「宿泊型」の利用は、24時間(3食付き)5,500円/泊(施設によってはオプション料金がかかる場合があります)、最大6泊まで。「通所型」は6時間(昼食付き)2,700円/日、最大7日まで、となっています。市内と近隣市含め22か所、利用できる施設があります(令和6年11月現在)。


お母さんの負担を減らすため、受入れ施設の連絡調整は保健師が行っている

 利用したい方は、市ホームページの利用申請フォームからのオンライン申請をはじめ窓口や郵送でも対応しています。申請後は保健師からの電話に、お困りごとや母子の様子、受けたい支援、利用したい施設などを伝えれば、利用施設への連絡調整は保健師がしてくれます。

手続きはスマホで簡単。保健師がやりたかった新事業


赤ちゃんをあやす保健師(左)

 「妊娠してから尼崎へ転入して来られる方も多くいらっしゃいます。新しいまちでの産前産後を支えたい。保健師としてぜひ実現したいサービスでした」と、健康増進課の石﨑さんはいいます。

産後の不安を延長入院でサポート


阪急武庫之荘駅南へすぐの場所にある末包クリニック

 阪急武庫之荘駅南にある末包クリニックは「宿泊型」の受入れ施設です。7月のサービス開始以来、早速、利用者がありました。


産後ケアの宿泊で利用できるバストイレ付きの個室

 同クリニックの助産師によると、「お産の状態や、お母さんの身体の回復具合を見て、退院を1日伸ばしたほうがいいかな、と思った場合など、産後ケアのサービスを使って延長入院しませんか、という提案もこちらからできるようになりました」。オンライン申請で手続きできるスピード感も、産後のお母さんにとってはありがたいしくみです。

授乳のストレスを「宿泊型」で助産師と解消


宿泊型で産後ケアを利用した経験を教えてくれました

 今年5月はじめ、第一子を出産した尼崎在住の方にお話を伺いました。「出産したクリニックが宿泊型の産後ケアを受け入れているのを知っていたので、サービス開始を知ってすぐ申し込みました」。

 宿泊型を利用したのは、赤ちゃんが生後2か月ごろ。母乳とミルクの混合で育ててきましたが、ちょうど授乳に悩んでいる時期でした。「授乳にすごい時間がかかって、母乳がちゃんと出ているのか不安になっていました」といいます。

 宿泊中、助産師さんに母乳やミルクを飲む様子を見てもらったところ、赤ちゃんが哺乳瓶で楽に飲めることを早々に覚えてしまったのでは、というアドバイスをもらいました。「それならこれを機に母乳を辞めて、完全にミルクに切り替えよう」と、心が決まりました。「これまで授乳のたびに母子でストレスを抱えていたのが、スッキリしました」と教えてくれました。


赤ちゃんを抱っこして笑顔で話す母親

 産後ケアを利用した2泊3日の宿泊期間中は、希望すればナースステーションで赤ちゃんを預かってもらうこともでき、食事も一人でゆっくり食べられたそう。出産直後と違い、体力が回復してきた状態で、日中の一人育児から解放され、安心できる環境で過ごせる産後入院の良さを晴れやかな笑顔で教えてくれました。

ひとりひとりに寄り添った子育て支援


笑顔の赤ちゃん

 令和2年から実施している「訪問型」の産後ケアも、今年からオンライン申請ができるようになったことで、利用者が倍増しているそう。「訪問型」は1回2時間2,000円、最大4回まで利用できます。助産師が自宅を訪問し、普段の赤ちゃんの様子を見てもらいながらアドバイスを受けられ、引き続き人気が高いそうです。

 出産から育児と休みのない毎日で、産後のお母さんは、自分が思っている以上にストレスや疲れを抱えているもの。産後ケアはそんなお母さんに束の間の休息や今後の育児に安心を感じさせてくれるサポートです。「ちょっと疲れているかな…」と感じたら、産後ケアを利用してみませんか。

「産後ケア」の詳細ページはこちら。産後ケアのオンライン申請も。

 産後を支えるサービスとしてほかにも、体調不良などで家事や育児が困難な場合は、食事の準備や、子どものお世話といった家事援助や育児援助をしてくれる「産前産後ヘルパー派遣事業」もあります。こちらは利用時間1日2時間まで、産前産後合わせて最大40時間まで利用でき、利用料は1時間800円です。

「産前産後ヘルパー派遣事業」の詳細ページはこちら

 「尼崎市では、妊娠届を受理するときに、保健師が面談をしています。面談時にひとりひとりのサポートプランを一緒に作成し、そこから必要な支援を検討します。不安を抱えている人には、早い段階から支援を行います」と、石﨑さんが教えてくれました。

 『妊娠期から子育て期にわたる切れ目ない支援』。尼崎市全体でかかげる目標のもと、保健師たちは「いつでも相談してくださいね」と、優しくメッセージを送り続けています。


尼崎市保健所があるフェスタ立花南館外観

保健所がある5階フロア入口

産後ケアの宿泊型を利用した赤ちゃん

赤ちゃんをあやす母親と保健師(左)

末包クリニック外観

産後ケアを受入れの病室に立つ助産師