みんなの尼崎大学開学記念講座 「園田北まちづくり協議会活動事例報告会」内田大造×江上昇

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写真、会場の様子

 平成29年6月に小学校区を単位に、新たな自治活動を始めた園田北まちづくり協議会。尼崎市では新たな地域振興体制の構築に向けた検討を進めており、この度、地域密着型モデル職員として園田北まちづくり協議会の活動に帯同している市職員とまちづくり協議会の事務局長が対談しながら今年度の取組を振りかえる報告会を開催しました。当日は市職員研修も兼ねて、約70名の参加がありました。
 園田北まちづくり協議会事務局長の横浜弁かつパワフルでエネルギッシュな口調に圧倒されつつも、自ら「半農半自治」と宣言されるにふさわしい、地域のことを最優先に活動されている話を聞いて参加者一同、胸が熱くなりました。

■内田大造さん(園田北まちづくり協議会事務局長、猪名寺自治会会長)の現在の取組

 園田北小学校区では住民ニーズアンケート調査を実施。全世帯3,000件のうち約1,000件からの回答を得て、地域の課題を集約し、それぞれの課題解決に向けて6つ分野でのまちづくりを進めている。
 「健康・福祉高齢者支援」分野では、①100歳体操や脳トレを行う「ふれあいサロン」、②地元スナックを借り切っての歌声ほっとサロン、その場であやとりなども行っている「高齢者の見守り」、③買い物支援やごみ出し、通院補助などを行う「ちょっと困りごと支えあいの会」の創設準備、④自分たちの健康は自分たちで守る「ずっと健康プロジェクト」を実施。
 2つ目は、子ども会が衰退し、地域コミュニティ崩壊の危機感から「子育て・青年隊支援」分野。①猪名寺忍者学校、②例年、同じ活動でいいのかとの反省から実施している子ども農園、③子どもと高齢者のふれあい食堂、④県の補助事業であるふるさとづくり青年隊事業を実施している。
 3つ目は、「コミュニティ・産業・地域活性化」を目指して、①地域の名産品「里芋」をつかったバルで地元商店をつなぐ「地域コミュニティバル」(商店同士をつなぐのに3年かかった)、②もちつき大会に下校時の見守り高齢者と児童を巻き込み、食育カルタ大会をセッティング(50人が参加)、③都市と農村交流10周年記念として丹波からデカンショ踊りを招く「デカンショ・盆バル祭」(10年目)。
 4つ目は「防災・防犯」で、6月に実施する青年会議所とのコラボ防災訓練では、避難行動要支援者600人と避難場所の園田北小学校に避難するイベントを開催予定。炊き出しや防災アトラクションゲームを行い、市内高校生も参加の予定。
 5つ目は「歴史・資源活用」。尼崎稲園高校生が地区内の観光ガイドマップをマンガで作成する。
 6つ目は「道路交通・生活環境改善」。尼崎市道路維持課と現地を散策し14か所の危険箇所について現在も協議を進めている。また、有馬街道沿いのこども公園にはシニアしか利用をしていないので地元住民で管理を請け負い、シニア運動公園として活用を考えている。

■江上昇(尼崎市ひと咲きまち咲き担当局尼崎大学・学びと育ち研究担当係長)

【園田北まちづくり協議会に関わった感想】
 取組が幅広い。
 企業・先生・商店街・住民など主体の多様性がある。
 動員力や補助金をとってくる力を含めた実行力がある。
 みんな楽しそうに参加している。
 自分たちで自分たちが動かしていると自負を持たれている。
 市職員が関わることで活動が加速化していたら嬉しい。
【市職員だからできたこと】
 文書作成、庁内調整、(市役所職員という)信頼感があってこそ。役所のスキルは役立つ!
【どんなことを考えながらやっているか】
 市職員の「できない理由ばかり並べて何もしてくれない」というイメージを変えたい。
 市と地域は要望・対立型よりも調和型(地域と市役所とが課題解決のためにともに考え、行動する)が望ましい。同じ立ち位置から同じ方向を見ることができれば、「ルールと限られた予算の中でどうすれば実現できるか」に向けて情報を出し合おうというベクトルが働く。そのためには「同じ立ち位置に立つ」ことと、「『対立する相手』ではなく、『同じ目標を持つ仲間』」と思ってもらえること。そう思ってもらえるように行動で示すことが必要。

■内田大造さんが猪名寺自治会の活動に参加したきっかけ

【きっかけ】
 20年ほど前まで労働運動に関わっていたが、地域のために何かをしたいと考えていたときに、園田地区で「自然と文化の森構想」が始まった。それまで農業や環境活動に関わったことがなく、自分には向いていないと思っていたが、農家の畑さん(自然と文化の森協会会長:当時)に出会い、サトイモ栽培を教わり、「つくったものを分かち合う」収穫祭や、野菜をつくる楽しさ、人との交流等、これまでになかった喜びを知り、それが楽しくて仕方なかった。
 声が大きいということで、自然と文化の森協会の活動の中で、猪名寺の歴史を掘り起こし、猪名寺のボランティアガイドをすることに。代々住み続けている方々の地域の愛着心は非常強く、猪名寺の歴史をよく知っていることが、地区内の方々の信頼を得るきっかけとなり、歴史を通じて地域への愛着や誇りをつくれる人になろうと決めた。
 その後、自ら企画した「猪名寺・万葉の森コンサート」の成功が自治会長として活躍するきっかけとなったが、まちづくり活動の一環として嫌悪施設の撤退を掲げた看板が原因で裁判に訴えられたり、苦労も多かったという。

【これまでの成果】
 大きな課題は一人でできない。全て連携して課題を解決してきたと考えている。住民が自ら木を伐採するなど協力して実施した佐璞丘公園の再生事業や猪名寺忍者学校の開催、小学校区内のあらゆる団体を巻き込み、島根・石見から神楽保存会を招聘して開催した石見神楽祭などなど…。
 猪名寺の住民に感想を聞いたところ、307人中、83%の人が「誇りをもって生き生きと暮らせるまち」になった、81%が「住んでみたい、行ってみたいまちになった」、79%が「自治会がよくやってくれた」との回答が。「うれしかった」

■内田さん×江上係長の対談

【内田さん⇒江上係長】
 暗いと思った。人の顔見て笑わない。話をしてもパソコンを打っている。ところが途中から変わってきた。相槌を打ってくれるようになってきた。猪名寺忍者学校で使うボルダリングの準備に駆けつけて作業を一緒にしてくれ、見直した。事務能力はある。結果的に助成金はとれなかったが(笑)。
【江上係長⇒内田さん】
 当初は要求型の方かと思い、怖がっていたんです。
 行動力が役所とは違う。スピードが早い。朝見たテレビの内容を出勤時には電話をかけてきてネットで調べてほしいということもしばしば。
★地域はどんな職員を求めているか
【内田さん】
 地域から信頼される職員。誠実、正直、約束を守る。一体感、向上心、ワクワク感が共有できる人。全国トップの協議会をつくろうとと言ったらそうだ!とノリのいい人。

■会場からの質問

Q 補助金がなくても園田北まちづくり協議会の活動は続くのでしょうか
A 地域の課題を解決するにあたって、ボランティアからビジネスの仕組みに落としこまないといけないと思っている。補助金頼りの従来のやり方だと自治会、まちづくり協議会の活動はしんどい。その解決方法の1つが自治会や協議会が応援するコミュニティビジネスを立ち上げ、互いに支えあう形だと考えている。儲ける自治会、協議会。小遣い程度のお金かもしれないが、地域の雇用も生まれる。ボランティアの時代は終わった。地域の課題をビジネスを取り入れて解決していく時代と考えている。