2023年7月8日(土)は、第37回みんなの尼崎大学オープンキャンパス「FARM &PIZZA!」を開催しました。いろんな立場で尼崎の農業に関わる人たちが、それぞれの大切にしていることや、お互いに聞いてみたかったことなどを語りあいました。後半は、畑に飛び出して採れたて野菜で作ったピザを満喫した様子をご紹介します。
農に関わる人の話を聞こう!
第一部は尼崎で農業に関わる人がつどい、それぞれの立場からこれからの農業について話すトークライブ。ゲストは<まちの農業をささえる人>JA兵庫六甲のオオニシさん、<農地と人をつなぐ人>みんなの尼崎大学農学部学長でもあるコミュニティファーム尼崎善法寺のウチダさん、<家庭に野菜をとどける人>コープ園田店店長のヤマナカさん、<代々お米を作る人>ヤスダさんの4人。
2年前にコープ園田店に赴任したヤマナカさん。コープこうべは通常のスーパーと違って、組合員が出資金を出し合って商品やサービスを利用し運営に参加することで成り立っている生活共同組合です。地域とのつながりづくりに重きを置いていて、ウチダさんが作る尼崎の特産品「田能の里芋」も旬の時期には店頭で限定販売しています。
JA兵庫六甲のオオニシさんは、農家さんから野菜の相談を受けたり、新しい肥料をおすすめしたりと農家の御用聞きのような仕事をしています。農家さんの悩みを解決できたときにやりがいを感じると話しますが、一方で農業従事者の高齢化が進んでいることに危惧しているそう。
食満で代々お米を作っているのはヤスダさん。働きながら稲作をする兼業農家です。土日にまとめて作業をしなければならないので、朝から7時間くらいトラクターに乗って一気に田植えをするそう。天気によって週末の予定が左右されるので大変だと話します。
園北ファームのウチダさんは、みんなの尼崎大学の農学部学長(農学部のオープンキャンパスの様子はこちら)。現在は3000平米の農地を借り受け、コミュニティファームとしてみんなでひとつの農地を共同運営しています。メンバーには40、50代の若手も多く、コミュニティビジネスとして農業で食べていける仕組みを作りたいと考えているそう。最近は市内の中学校給食に田能の里芋コロッケを2万個出荷することが決まり、都市の農家でも稼げるように試行錯誤されています。
2018年から市民が農地を借りることができる「都市農地賃借法」が制定され、ウチダさんは尼崎の第一号として他人から畑を借り受けました。「今まで農業は家庭の問題でした。でも基本は楽しくないとできない。だからみんなで協力しあって運営するんです」と話します。畑はあるけれど高齢化や後継者がいないなどの問題で活用できない人が年々増加する中、今ではウチダさんが市内で一番広い面積の畑を耕しているそう。
「実は生産緑地法という法律があり、畑のままだと一反1万円以下の税金で済みますが、埋め立てて駐車場などにすると100倍の100万円以上がかかるので、簡単に畑をやめられないんです」とヤスダさん。相続したら一生農業をしなければならず、他人に売るなら相続税を遡って支払わないといけないそう。「まるで呪いのよう…」と参加者も顔を歪めます。
「だからちゃんと作っていることを証明するために、農作物を作る体力はなくても耕すだけ耕している人も多いんです」とオオニシさん。JA内にも畑を貸したい人と借りたい人をつなぐ部署があるといいます。ウチダさんもほとんどの畑を無料で借りていて、貸主も借主も双方にとってメリットが生まれているのです。
都市は田んぼや畑に冷たい?
次はテーマに沿って皆さんに質問をします。まずは「都市は田んぼや畑に冷たい?」のテーマから。ヤスダさんは「トラクターに乗ると粉塵が出るので怒られるかなと心配していますが、近隣の人とはうまくやっていますね」と話す一方で、JAには「肥料が臭い」「農薬が家に入ってくるのが気になる」「音がうるさい」などのクレームが入っているそう。
ヤマナカさんは「買う側からすると市場から仕入れた野菜の方がきれいで安いです。値段で買う人と地域性で買う人がいますが、規格化されたものの方が売れやすいのが事実ですね」と販売者ならではの視点でコメントします。
それでも都市農地を続ける理由は何でしょうか。「都市の中で自然がある風景は癒されると思うんですよね。田んぼって生き物がいるし、どんどん稲が成長して風景が日々変わっていく。こんな環境は得難いと思います」とヤスダさん。オオニシさんは「初めて食べた採れたてのトマトの美味しさを鮮明に覚えています。地域に畑があることで採れたての美味しい野菜を皆さんに食べてもらえます。農業は農家の生き甲斐になっているので、無くしてほしくないですね」。
ウチダさんは「大切な視点は都市農地をどうするか。私は都市農地を地域コミュニティの再生の場にしたいと考えています。子ども、障がい者、体験の受け入れなどいろんな人が関わることでコミュニティが生まれています。新しい農業を実践するうちに、道の駅のように地域の人が畑に野菜を購入しに訪れるようになりました。他の農家でも同じように畑を開くことが存続のきっかけになるのでは」と話します。
素朴な疑問を聞いてみよう
最後に参加者からの質問タイム。「悪くなった野菜はどうしてますか?」の質問には「割れたトマトは加工品にする人に需要があってどの野菜もよく売れますよ」とウチダさん。さらに「田んぼをやめて野菜しか作らなくなるのはなぜ?」には、ヤスダさんから「うちの隣の田んぼも野菜しか作らなくなりました。隣の方は『しんどくなった』と言ってましたね。稲作をするための機械もトラクター150万、乾燥機100万、コンバイン150万とお金がかかるので、維持費を削るために売ったのかもしれないですね」と回答がありました。
「誰でも簡単に畑を借りられますか?」の質問にウチダさんから「誰でもは借りられません。JAと市と農業委員会の許可がいるので、農業をしたことがある実績を作るためにまずは園北ファームで経験しても良いかもしれないですね」とお誘いの回答もありました。
畑で手作りPIZZAを食べよう!
第二部はウチダさんが運営しているコミュニティファーム尼崎善法寺に移動して、とれたて野菜で作ったピザをいただきました。ピザ生地は畑に通うノナカさんのお手製。モチモチした生地とみずみずしい野菜でできたピザは美味しいこと間違いなしです。
ピザが出来上がるのを待っている間に、ウチダさんとファームツアーをしました。参加者はカゴを持って好きな野菜をその場で収穫して購入OK! ウチダさんの説明を聞きながら旬の野菜を教えてもらいたくさん収穫しました。
長時間のオープンキャンパスとなりましたが、参加者からは「都市農業のあり方を聞けて面白かった」や「ピザを囲んで参加者同士で話ができて良かった」、「またこの畑に野菜を買いに来たいと思いました」などの感想があり大好評のうちに終了しました。
次回のオープンキャンパスは、少し空いて11月に予定しています。詳細が決まり次第SNSなどで告知しますので、ぜひチェックしてみてくださいね。偶数月の第2水曜にはひと咲きプラザでみんなの相談室も開催していますので、みなさんのご参加お待ちしております。