やっと秋を感じられる空気になってきた10月9日(水)にみんなの相談室を開催しました。今回のよるの談話室では、リタイア後のシニアが地域とどう関わり、どのように新たな暮らしを楽しんでいるのか、実践者のお二人を迎え「シニア世代のウェルビーイング」について話を聞き、対話をしてみんなで学びを深めました。そんな相談室の様子をレポートします。
「みんなの尼崎大学 相談室と談話室(略して、みんなの相談室)」とは…
偶数月の第2水曜日の13:00〜14:30(ひるの相談室)、19:00〜20:30(よるの談話室)をあまがさき・ひと咲きプラザで開催しています。ひるの相談室は「尼崎でこんな活動・事業をしてみたい」「進めたいプロジェクトがあるから、仲間が欲しい」「何ができるかわからないけど、お手伝いをしてみたい」など、活動の場を見つけたい人や広げたい人が相談できる場です。よるの談話室は、あるテーマについて話題提供者から話を聞き、集まった人たちで、そのテーマについて談話をする場です。
今回の「ひるの相談室」は、いつもより少人数でスタート。参加者からはそれぞれ相談事が持ち込まれました。その中から、2か月前にバックパッカーの旅の途中で尼崎に辿り着き、「尼崎のまちが楽しいので、居ついてしまった」というあやかさんと、パフォーマーでもあり、ジャクリング競技に使う道具の制作を仕事にする、きぞはるさんの相談事を紹介します。
外国人と地元の人が楽しくすごせる場をつくりたい
現在は尼崎のシェアハウスに暮らしているというあやかさん。「尼崎は音楽フェスや色んなイベントがあって暮らしていて、とても楽しい」といいます。最近は尼崎で外国人との出会いも多いので、シェアハウスのオーナーと「建物の1階にある空きスペースで日本にいる外国人とまちの人が交流できたらいいね」と話していて、相談室を訪ねて来られたそうです。
大阪にはお互いの言語を教え合う「ランゲージエクスチェンジ」の場があるので、尼崎でまだそういう場がないのであればやってみたいと夢を語るあやかさん。すると、杭瀬に外国人向けの日本語学校があり生徒が多数集まっていること、大庄地域には外国人向けのシェアハウスがあることや、あやかさんの住んでいるシェアハウスの近くで活動している尼崎市国際交流協会の人を知ってるよなど、参加者から情報が集まってきました。
「日本にいる外国人と尼崎の人が楽しんですごせる場をつくりたい」という、あやかさんの目下の夢ですが、尼崎滞在2カ月で「みんなの相談室」にたどり着く、あやかさんのフットワークですぐにでも実現しそうな気がしてきました。
あなたの知らないジャグリングの世界
次の相談は「尼からジャグリングを広めたい」というきぞはるさん。尼崎でジャグリング道具のひとつであるシガーボックスを主に製造する工房を経営されています。その傍ら、「競技人口を増やしたい」と、去年6月には尼崎ジャグリングクラブ「あまのジャグ」を立ち上げました。現在20名ほどが市内の練習場で技を高め合っているそう。
「ジャグリングは何となく見たことある程度…」という参加者たち。「大道芸とジャグリングの違いとは?」や「種目や道具の種類は?」などの基礎知識を分かりやすい解説で教えてもらうと、参加者はぐいぐいとその魅力に引き込まれていきます。
尼崎でショーを見る機会が増え、競技への知名度が上がることが目標という、きぞはるさん。今回の解説が絶妙だったことから「ジャグリングの解説と実演のショーを企画すれば、絶対、興味持つ人増えそう」との声が多数聞かれました。
最後には、きぞはるさんから「尼崎市にジャグリングを盛り上げて欲しいなんて無責任なお願いじゃなくて、僕自身がジャグリングを通して尼崎を有名にしたいと思っています」と、熱いコメントも。尼崎でジャグリングがトレンドになる日がいつか来そうな予感がしてきました。
よるの談話室「シニア世代のウェルビーイング」
19時からは「よるの談話室」と名付けて、一つのテーマについてじっくり話し合う場を開いています。10月のお題は「シニア世代のウェルビーイング」。最近よく耳にするこの言葉は「ウェル(よく)」「ビーイング(居る・ある)」という意味で、健康的で幸せな人生の過ごし方を改めて考える機会になりました。
はじめに話題を提供してくれたのは、村松賢一さん。大手保険会社での40年間の会社員生活ののち、キャリアコンサルタントとして独立し、40〜50代のミドルシニアのはたらきかたについて考えてきたといいます。コロナ禍に西宮の自宅からパソコンの画面越しに東京に向けた研修をしていた時に、ふと地域と全然つながれていない自分に気づき、尼崎にあるまちづくりの会社に65歳のインターンとして参加しました。その後、地元の西宮市で「Machigaku(まちがく)」という、地元の人たちの話を互いに聞きあう授業を企画するようになったといいます。
「仕事をやめると、役割と収入と居場所とつながりを一気に失います。定年後はそれをすべて自分で集めないといけない」という村松さん。自らの経験を振り返りながら、新しい出会いにわくわくでかける積極性が大切だと語ってくれました。とはいえ、人はすぐに変われないし、そもそもその人自身のキャラクターもあります。そんな雰囲気を察してか、もう一人の話題提供者、原田明さんが「ニックネームを作るといいんですよ」と提案してくれました。
もう一人の自分を歩むようになった理由
大手広告代理店を55歳で早期退職して地域のさまざまな活動にかかわる原田さん。伊丹市在住ながらNPO法人あまがさき環境オープンカレッジで副理事長を務めるなど、尼崎では「ボブさん」の愛称で親しまれるアクティブすぎるシニアですが、「僕も会社を辞めた後、いつまでも元の会社の人間だという意識があったんです」と当時を振り返ります。
当時は、異業種交流会や心理学の研究会など「とにかく色んなところに顔を出した」という原田さん。そんな中、自分のことよりもまちのことを考えている仲間に尼崎で出会ったのをきっかけに、地域活動に参加し「ボブさん」としてもう一人の自分を歩むことになったといいます。阪急塚口駅前でゴミ拾いをする時には「トングマン」を名乗り、自らが暮らす伊丹では自治会長を引き受けたり、いくつもの顔を楽しんでいます。
地域デビューの不安は出会いが解消してくれる
ウェルビーイングに向かうためには「何かを一緒にやることが大切」とお二人とも口をそろえます。「SNSで友達を増やすことより、会える人が多い方が嬉しい」という村松さんに、「こんなふうに人が集まって話せる機会がある尼崎は本当に魅力的だと思う」とこたえる原田さん。人が作った渦に巻き込まれていくうちに次の渦ができる、ローカルなつながりを楽しんでいます。
「もうすぐ定年なのでその助走ができたら」と参加したまる子さんは「私も自分にニックネームをつけようと思いました。もう一人の自分を見つけたいと思います」と手ごたえを感じた様子。みんなの尼崎大学の常連のキジマさんは「1回や2回だと出会いにはつながらない。ずっと続けてその場にいることが大事。根気よく足を運ぶことで自分にぴったりの出会いがいつか必ず見つかるはず」とこうした場に欠かさず来る理由を聞かせてくれました。
「地域デビューは自分も不安だったけれど、振り返れば人の出会いが解消してくれた(原田さん)」。「会社員時代は組織のしがらみがあり自分を発信することに罪の意識があった。オープンマインドで自分を開くという感覚を取り戻すことが大切(村松さん)」とお二人が私たちの背中をそっと押してくれる談話室となりました。
次回のみんなの尼崎大学相談室・談話室は、12月11日(水)に開催します。
「ひるの相談室」は13:00~、「よるの談話室」は19:00~「まちの空間活用」をテーマに参加者で話し合います。たくさんのご参加お待ちしております。