JR尼崎駅から北へ5分ほどの場所、潮江の長屋の一角に小さなサロンがあります。このサロン「malu」のオーナー兼セラピストの嘉勢由加里さんは、1年半前の2020年3月、1年ほど暮らした芦屋から移り住み、サロンをオープンしました。
尼崎・立花で生まれ育った嘉勢さんは、学生時代に尼崎を離れ、20代後半に尼崎へ戻って来ました。その後も、また何度か尼崎を離れた時期もありましたが、やっぱり尼崎へ。ほかのまちを知りつつ、なぜ尼崎へ戻ったのか聞いてみました。
立花に開いたオーガニックカフェ
小さい頃からものづくりが好きで、学生時代からアーティスト活動をはじめた嘉勢さんは20代で東京へ向かいます。ある時ふと、「母親と一緒にコーヒー一杯をゆっくり淹れる風景が浮かんだ」のをきっかけに尼崎に戻ります。
ほどなく、実家近くでカフェをするイメージにピッタリの物件と出会い、2008年、オーガニックの素材にこだわったお手製パンやランチを提供するカフェをオープンします。
そこで出会うまちの人とのつながりから、「はじめて尼崎のまちへの愛着を感じながら、生活できた時期でした」と振り返ります。
尼崎でカフェを営みながら、持続可能な暮らしへの興味を深めるうち、より土地に根付いた暮らしを求めてカフェを閉め、嘉勢さんは和歌山へ向かいます。そこでは住み込みで農業研修を受けていましたが、体調を崩したのをきっかけに、ふたたび尼崎に戻ります。
カフェ店主からセラピストへ
尼崎に戻り、病気の治療に専念するかたわら、同時にセラピスト養成の学校へ。研修ののち、芦屋にある植物療法を取り入れたサロンで働くことになり、芦屋に居を移します。
そして、サロンでの経験を積み、独立先の候補として「沖縄やハワイまで考えた」という嘉勢さんが最終的に選んだ場所は、JR尼崎駅から近い潮江。カフェ時代に、住まいを求めている友人のために知り合いの建築士を介して内覧したことのある長屋でした。はじめての物件見学からは時が経っていましたが、「自分のサロンのイメージに合いそう」と、イメージが湧いてきたそう。再度内覧し、すぐに入居を決めました。
尼崎・立花での暮らしが長い嘉勢さんが、潮江のまちに暮らして1年半。立花と比較して、潮江のまちをどう感じているのでしょうか?「駅前の便利さはもちろんですが、住んでいるエリアは駅前から一歩入れば、昔懐かしい住宅街といった雰囲気で落ち着きます。近くに知り合いの家も何軒かあるし、何かあったら実家も近いという安心感があります」。
また、大家さんも近くにお住まいで、何か困りごとがあれば、すぐ連絡して駆けつけてくれるそう。これまで、同居の猫がアレルギーになったのでカーペットを取り外してもらったり、網戸の取り付けをお願いしたりしたことも。「すぐにホームセンターで材料を調達して作業してくれて。めちゃめちゃ親身に対応してくれるんです」とは、何とも羨ましい関係です。
モノを最小限にしたシンプルライフ
子どものころから、整理好きだったという嘉勢さんの暮らしは、モノを最小限にして、すっきりとした清々しさに満ちています。現在は、週に数度の通院もあり、からだに無理をさせない生活だといいますが、暮らしのルーティンはあるのでしょうか?
「朝はまず、自分のためのコーヒーを淹れること。愛猫のお世話をすること。お花にお水をやり、掃除機をかけること。そこまでは、朝の日課にしてますね」と、教えてくれました。
サロンでは、オーガニックのハーブや植物、クレイやオイルを使って、お客さんの体質や、その日の体調に合わせたハーブを選んで施術をしています。「サロンで使っているものは私自身のからだも助けられているものばかり。サロンに訪れる人にも植物や自然のものがもたらす癒しや恩恵を味わってほしいですね」。
柔らかな雰囲気の嘉勢さんのサロンに来れば、からだの休息とシンプルで穏やかな暮らしのヒントにも出会えそうです。
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