境内に広がる心地よいマルシェの風景

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 阪急園田駅を降りて、園田橋線を北へ5分ほど歩いたところに小さな神社があります。名前は白井神社。10月下旬の爽やかな日曜日、その境内にいくつものテントが並び、出店者たちとおしゃべりしながらお買い物を楽しむ人たちが。何だかとてもゆったりとした時間が流れているような、そんな居心地のいいマルシェに出会いました。

園田でもこんなマルシェをやってみたかった


なぜか白いテントのお店が多いのは偶然だとか

 企画しているのは栃尾麻由美さん。色々なマーケットイベントに出かけるのが好きで、特に大阪・阿倍野区の神社で開かれていたあべの王子みのり市がお気に入りだったそう。比較的こじんまりとした神社でありながら、その空間の雰囲気がとても素敵だといいます。

 実は栃尾さんの夫は白井神社の宮司を務めています。「白井神社という場所を生かして、いつか自分もマルシェをやってみたい」そんな思いが高まる中、ある時、友人の椎名あゆみさんに「白井神社でマルシェとかできないかな?」と相談します。すると二つ返事で、椎名さんは知り合いのアクセサリー作家の平田安代さんを紹介してくれました。その出会いから、「しらいマルシェ」が動き出します。


尼崎から東京へと拠点を移してからも、しらいマルシェには毎回出店する「sucre(シュクル)」の平田さん(右)

 さらに平田さんから紹介された店や作家さんを栃尾さん自身で事前に一軒一軒訪ねたり、出店するイベントに足を運んだりして関係を築き、出店者を集めていきました。こうして、はじめての「しらいマルシェ」が、2016年10月に市内外から15店が集まり開催されました。

コーヒー好きからいつのまにか自分も出店者に


コーヒーを淹れる栃尾さん

 2022年からは、栃尾さん自身も自家焙煎コーヒースタンドを出店しています。元々コーヒー好きだったこともあり、しらいマルシェに出店していたコーヒー屋さんから焙煎技術を習いました。趣味で始めたものでしたが、そのお店が遠くへ移転して出店できなくなり、その代わりにと自身が「no one coffee」という名前で出店することに。こだわりの新鮮な豆で丁寧に焙煎した本格的なコーヒーは飲みやすいと好評で、ひっきりなしにお客さんが買い求めにきました。

私たちの「好き」がスタンダード


本殿に向かって両側にあわせて20店ほど並ぶ

 白井神社の境内は、決して広くありません。毎回の出店数は20店程度で、規模としては小さめです。そのなかで物販や飲食店、ワークショップなど一日を通して楽しめるようにバランスを考えているといいます。

 実は、しらいマルシェでは出店者の公募はしていません。当初から多少の入れ替わりはありますが、毎回、主催する栃尾さんが全体のバランスを考えながら出店者を決めています。飲食店が少ないようであれば、新たにどんなお店がいいか考え、出店に向けて調整する、という具合です。「自分たちの知り合いや好みのお店を集めているので、ある意味クローズドな運営です」と栃尾さん。「自分の好きが基準」という方法がマルシェの統一感を生んでいます。

みんなで作る心地よさ。その秘訣は…


ブースに飾られたスワッグやリースたち

 スワッグ(※)やリースの作家「Mon petit jardin(モン プチ ジャルダン)」の藤本雅子さんは大阪府三島郡島本町から出店しています。店舗は持たずに北摂を中心に活動する彼女は「日ごろ色んなイベントに出店しているけれど、ここが一番心地いいんですよね」と絶賛します。

※スワッグ…花や葉、実などの植物を束ねて壁にかける飾り


特に飲食系のブースは行列ができ、午前中には売り切れるところも

 また、武庫之荘にある「クレープのお店まつばさん」の須佐美寛子さんも「出店者同士みんなが知り合いという安心感や、お客さんの雰囲気もいいですよ」としらいマルシェに出店する楽しさを笑顔で語ります。

 境内には家族連れの姿が多くみられます。子どもがワークショップに夢中になっている間に、大人たちはゆっくり商品を見ながらお店の人とおしゃべりしたり。そんな風景があちこちに広がっています。


かぼちゃやリースを使ったワークショップに参加する子ども

 その心地よい雰囲気はお客さんも感じています。「知り合いの作家さんが出店していたのがきっかけで来るようになりました。近所にこんなマルシェがあるのが嬉しくって、いつも朝から来て最後まで楽しんでます」と、開催のたびに足を運ぶファンも。

 ゆっくりと時間を過ごせるよう、飲食しやすい休憩スペースもあります。「出店者はもちろん、お客さんも行列などの対応に協力的でとても助かっています」と栃尾さん。2016年にはじまり、回を重ねるうちに、ここに集う人たちが一緒になってそんな居心地のよさを生み出しているようです。

園田に生まれた新しい風景


お客さんと話す栃尾さん

 かつては白井神社でも夏祭りが開かれ、境内にはいくつもの屋台が並び、子どもが集まっていました。失われた風景に寂しさを感じつつも、「しらいマルシェをきっかけに白井神社を身近に感じてもらえたら」と、栃尾さんはそんな思いも巡らせています。
 毎年5月と10月に開かれ、来春には12回目を数える「しらいマルシェ」。園田のまちに生まれた新しい風景に会いにぜひ足を運んでみてください。開催日のお知らせはInstagram(@siraimarche)で。


白井神社の鳥居

ワークショップを楽しむ子ども

お菓子を販売するブース

アクセサリーを見るお客さん

アクセサリーが並ぶブース

植物を並べる出店者

アンティークの家具が並ぶブース

休憩コーナーでお弁当を食べるお客さん

境内の様子