響け!青春の中学校吹奏楽(小園中学校)

  • LIFE

 例年、夏休みに入ると間もなく、吹奏楽部のコンクールシーズンが始まります。「全日本吹奏楽コンクール」は、まずは地区大会から。今夏、地区大会から県大会に進み、さらに関西大会出場も果たす快挙を達成した小園中学校吹奏楽部。
 今年も含め過去3年連続して、地区大会で最優秀賞(第1位)のいわゆる強豪校。まだコンクールの熱気が冷めやらぬ練習現場にお邪魔して、その強さのヒミツを教えてもらいました。

小学生から音楽が身近な園田で


全体練習で指揮をする藤田先生

 現在、吹奏楽部の顧問を務めるのは、音楽教諭の藤田恵理先生。藤田先生は2019年に小園中学校に赴任して来ました。前任の顧問時代も小園中学校は何度も県大会、関西大会出場を果たしてきた歴史があるそうです。
 「元々、音楽が盛んな地域だと思います。小学校に吹奏楽部や音楽隊があったりして、中学生になる前から親しむ土壌があるようです」と藤田先生。

顧問は吹奏楽未経験。楽器は持たず歌って熱血指導


インタビューに答える藤田先生

 実は、藤田先生は初任校で顧問に指名されるまで、吹奏楽には全く触れてこなかったそう。
 「ピアノの経験はありましたが、吹奏楽の指揮をしたことがない、フルスコア(吹奏楽等の合奏の楽譜)を見たことがない。それどころか演奏を聞いたことがないという、まったく知らない世界でした」と告白します。

 しかし、学生時代はずっと運動部に所属し、そこで培った持ち前のバイタリティを発揮。前任の顧問や楽器屋さんなど、あらゆる手立てで教えを乞える人を頼り、吹奏楽指導のノウハウを身に着けていきました。「今でも楽器はできませんから、歌って指導します」。

熱烈な勧誘で吹奏楽の扉を開く


音楽室を使った全体練習の様子

 現在、吹奏楽部は3年生21名、2年生24名、1年生28名の総勢73名です。大所帯の部員たちをまとめるのは大変かと思いきや、「もっと人数が欲しいですね。吹奏楽は10~15種類の楽器を扱うので、各学年25名くらいで層を厚くしたい」とのこと。

 新入生が入学してくると、少しでも吹奏楽に興味を持ってもらえるように、部員が登校時間に玄関前で演奏したり、藤田先生も音楽の授業でPRしたりと、熱烈に勧誘します。

 そうして、中学校ではじめて吹奏楽の扉を開いた部員も含め、主に同じ楽器やパートの先輩から教えてもらいながら、初めて触れる楽器の鳴らし方、吹き方を覚え、合奏の面白さに目覚めていくのです。

部員も顧問もともに青春


集中して練習に取り組む部員たち

 全体合奏の練習シーン。指揮する藤田先生は一人のミスも聞き逃さず、演奏を止めます。
 「おいおい、ドラム。そんなんじゃ乗られへんで。もう1回!」と、指導は熱を帯びます。
 「藤田先生は熱血。でも最後まで見捨てず指導してくれる優しい先生です。ちょっと厳しいくらいのほうが、みんな前向きになって取り組めています」と部長は言います。

 藤田先生に、その熱意はどこから来ているのか、聞いてみました。
 「自分が中学の時、バレーボール部に所属して、部活は大変だけど大好きで、すごい充実した毎日だったんです。まさに青春!それを教師になって、部員たちとまた一緒に味わっている感じなんです」。顧問と部員という関係ではなく、「一緒に青春している同志」として部員たちを見ているという藤田先生。


合同練習を終えた部員たち

 その思いは部員たちに伝わっているのでしょう。部活動の時間が終わった途端、ピリッと張り詰めた空気が一気にほどけ、仲間たちと笑い合う部員たちの姿がありました。
 「学年を越えて仲が良いのが特徴です。いい雰囲気で練習に取り組めていて、団結力も強いです」と部長。部内の雰囲気の良さも強さのヒミツのようです。

「全日本吹奏楽コンクール」への道のり


出場メンバー以外も含め、部員全員で会場入り。全員で喜びを分かち合った関西大会

 「全日本吹奏楽コンクール」は、1940年から始まった伝統ある国内最大の音楽コンクールです。課題曲と自由曲の2曲を演奏し、審査によって金賞、銀賞、銅賞のいずれかが贈られます。
 地区大会を経て、都道府県大会、さらに全国11ブロックに分けられた支部大会があり、全国大会へ。毎年、中高生の全国大会は名古屋国際会議場(名古屋市)で開催されています。

 今年、小園中学校が金賞に輝いた東阪神地区大会には、尼崎のほか、伊丹、川西、猪名川町の4市町の中学校が出場しました。エントリーした大編成(A)部門には26校が出場し、その中から県大会への出場校に選ばれました。さらに県大会では出場した28校の中で見事金賞を獲得し、関西大会への出場を果たしたのです。


関西大会のステージで演奏する小園中学校吹奏楽部

 近畿2府4県の代表校30校が出場した関西大会の会場は、地元の尼崎市総合文化センター。課題曲である行進曲『煌めきの朝』の演奏について、審査員から「みんなで音楽をやろう!という気持ちが伝わってくる演奏だった」「明るい音色で爽快なマーチだった」という講評を受けました。全国大会への出場切符は逃したものの、銀賞を獲得しました。

 「とにかく今年はメンバーが一人も欠けず、全員でコンクールに参加できました。どのパートにも上手い部員がいて、演奏のバランスが良かったと思います」と藤田先生は今年の快挙を振りかえりながらも、「関西大会のレベルの高さにビックリしましたが、次は金賞そして全国大会へ」と、また新たな目標が定まりました。

地域に響け!金賞の音色


関西大会である「関西吹奏楽コンクール」で贈られた受賞トロフィーと賞状

 「あいさつ、返事はしっかりとー」は藤田先生が、常に部員に伝えていることです。コンクールや校外での活動で使用する楽器の運搬には、保護者のサポートが欠かせません。また「吹奏楽は聴いてもらう人に喜んでもらってこそ」という想いがあります。こうした指導を受けて部員たちは「いつも感謝の気持ち」を心に留めています。

 小園中学校吹奏楽部の演奏は、園田カーニバル、伊佐具神社秋祭りといったイベントやお祭りなどで、地域の人たちも聴くことができます。青春ロードを突き進む顧問と部員たちが奏でる熱い演奏を、ぜひ聴いてみてください。


インタビューに答える部長

合同練習の様子

合同練習の様子

合同練習で指揮をする藤田先生

合同練習の様子

合同練習の様子

練習を終えて笑顔の部員

合同練習の様子

校内を清掃する部員