日本の文化を学ぶ多彩な部活動(武庫東中学校)

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 2020年に武庫東中学校で新しく生まれた部活動、その名も「日本の伝統文化研究部」。邦楽合奏を中心に、生け花や呈茶(ていちゃ)、けん玉、習字などに取り組み、校外学習ではお城や博物館見学もあるという、多彩な部活動にお邪魔しました。

はじまりは箏(こと)の音色に魅せられた先生から


顧問の坪井先生は、授業では音楽教科を担当する

 日本の伝統文化研究部を立ち上げたのは、音楽教諭の坪井美津子先生。坪井先生は教師になってまもなく、これまで経験のなかった箏を習い始めました。以来、その魅力に目覚め師範を取得、今も学び続けています。

 中学校では学習指導要領の変更により、2012年から音楽の授業で日本の伝統楽器に触れることになりました。授業を通して、自身も夢中になった箏の魅力を生徒に教えることになった坪井先生。授業数は多くはないですが「もっと弾いてみたい」と、興味を持つ生徒の声もあり、他校の先生と伝統楽器の研究会を作り、生徒たちと発表会を開くなど、経験を積んできました。

箏から日本の伝統文化を掘り下げる


箏の発表会が終わったときなど、一息つく時にけん玉をやることも

 部活動の立ち上げに集まったのは8名の生徒たち。小学校時代に少し触れた箏の音色に魅せられたり、坪井先生の人柄に惹かれたり、さまざまなきっかけで今では15名が所属しています。

「伝統文化とはどういったものがあるか、自分たちでやりたいことは何かなど、子どもたちと相談しながら部活動の内容を考えています」と話す坪井先生。こうして生徒の意見を取り入れながら、活動は邦楽合奏のほか、生け花や呈茶(ていちゃ)、けん玉、百人一首、はたまた校外学習としてお城見学や太秦映画村への遠征などへと広がっていきました。

休んでも参加しやすい学校の居場所に


週5回、校外のテニスクラブでプレー。「週1の部活でリフレッシュしてます」という部員

 現在、活動は週2回。「学校外での塾や習い事など予定があったら、そちらを優先してもいいよ、と伝えています」という坪井先生。たとえ休んでも、部活動から足が遠のくことにはならないようです。「部活がホッと一息つける場所」と、答えてくれた部員も。それこそが坪井先生が目指す部活動のひとつの役割です。

 部員たちは、校外でどんな習い事をしているのか聞いてみると…テニスや少林寺拳法、ダンスといったスポーツ系のほか、ピアノや習字、囲碁といった文化系まで、さまざまなジャンルの活動をしているようです。
「そういった場で培った集中力が、この部活で活かされることもあると思います」。生徒がいろいろな経験をしながら成長していってもらえたら、というのが坪井先生の願いなのです。


漢数字が並ぶ譜面を見ながら、弦をはじく

 学生時代は吹奏楽部に所属し、吹奏楽部の顧問になりたくて音楽教諭を目指したという坪井先生。実際に吹奏楽部の顧問も経験したから、現在があります。吹奏楽部のように一つのことを一生懸命突き詰めていくのも大事としながらも、「教師にもいろんな仕事があって、私にとっても、今この部活がホッとできる場になっています」と微笑みます。

学校の外にも箏の音を響かせたい


箏のほか、締太鼓や三味線が加わる楽曲もあり、部員たちが交代で担当する

 普段の活動は、やはり箏の練習が中心になります。使用する箏は十三弦、十七弦と2種類あり、弦の数が多くなると、難易度もあがります。難易度の高い楽器を弾きこなす先輩の姿を見ながら、後輩たちも徐々に弾きこなせるようになるのです。箏のほかにも三味線や締太鼓といった伝統楽器の加わる演奏も。創部早々コロナ禍に見舞われ、校外での発表の機会が少なかったのですが、これからは少しずつ外へも発信していきたい、とのこと。


部活について語る部長(右)と副部長

 校外でさまざまな習い事をしながらも、この部活に集まる部員たち。「日本の伝統文化研究部」は学校内では、どんな風に思われているのでしょうか。
「部活として珍しく、貴重な体験ができるところとして知られています」と、部長。「箏の魅力は全員が一体となって音を作っているところです」と語る副部長。自分たちの貴重な体験をもっと多くの人に知ってもらいたい、との思いもあるようです。

 古典からポップスまで弾きこなす演奏を聞くと、伝統楽器への興味がむくむくと湧いてくることでしょう。これから学校外での発表も広がって、まちで彼らの演奏を耳にするのが楽しみです。


箏の弦をはじく様子

顧問より指導を受ける部員

合奏している様子

箏の譜面

演奏する部員の様子

演奏する部員の様子

合奏で三味線を弾く部員

部室の掲示物

壁に立てかけられた箏