東京オリンピック、パラリンピックが開催される平成32(2020)年、小学校3~6年生を対象とした外国語の授業が本格的に始まります。平成30、31年度はその移行期間。尼崎市では、小学校3年生から英語の授業があり、ALT(外国人外国語指導助手)とJTE(英語指導補助員)の先生が、年間で決められた時間数、派遣・配置されています。そんな中、園田東小学校では校内研究のメインを外国語活動・外国語としており、特色ある学校づくりの取組みとして、1年生から英語の授業を実施していたり、校内や教室内の掲示物を日本語と英語のセットにしていたりと、英語が日常に溶け込んでいる様子がうかがえます。

ネイティブの発音を、耳で覚える。
園田東小学校では、英語を母国語とするALT(外国人外国語指導助手)のブッカー先生と、英語が堪能な地域の人材・JTE(英語指導補助員)の川﨑先生が、英語の授業で担任の先生を補佐します。

まずはブッカー先生と6年生の授業に。子どもたちが元気よく英語であいさつをします。プリント学習では、担任の中村先生とブッカー先生がスペルを確認していきます。ブッカー先生は「名字と名前の間はこれぐらいのスペースを空けてください。OK?」と丁寧に教えます。

この日のメインは「駅」「神社」「レストラン」などのピクチャーカードを使ったゲーム。まず、ブッカー先生をお手本に、大きな声で発音練習をしてからグループに分かれました。

1つ目のゲームは、並べた数枚のカードをカルタのように取り合いっこ。ブッカー先生が言ったカードを先に取った人が勝ちです。2つ目のゲームでは、答える人が目を閉じている間に、ほかの子どもたちがピクチャーカードを1枚裏返し。答える人はほかのカードを見て裏返されているカードを当てます。もちろん、英語で答えます。当たったら次の人へ。必ず英語で答える番が回ってきます。分からなくても、友だちや先生方に教えてもらえるので安心。

最後は尼崎を紹介する英文をつくります。「動物園はa zooだけど、水族館はan aquariumです」と先生がさりげなくアドバイスしますが、たくさん発話するために「a」「an」の細かな区別までは説明しません。

「ALT(外国人外国語指導助手)やJTE(英語指導補助員)の先生たちのおかげで、きちんとした発音を学ぶことができています。本校は1年生から英語の授業をやっているので、子どもたちも自然と英語を口にしていますね。僕は英語が得意ではありませんが、できるだけ英語を使うようにしています」と中村先生。
「英語の素晴らしさを子どもたちに教えたくてALT(外国人外国語指導助手)になった」と言うブッカー先生は尼崎ひと筋。市内の小学校や中学校で長年教えているそうです。

「子どもたちが英語を楽しんでくれていることが一番嬉しいですね。授業では、子どもたちの反応を見ながら、発音のスピードをゆっくりにしたり、分かりやすく説明するよう気をつけています。最初からきれいな字を書かないと癖がついてしまうので、書き方だけはしっかりと教えるようにしています。尼崎の子どもたちは明るくて、挑戦者ですね。やってみよう、という気持ちが強い」
英語を楽しく学ぶ工夫が随所に。

次に、JTE(英語指導補助員)の川﨑先生と向かったのは3年生の教室。今回は2種類のゲームをやりました。まずは、英語で質問して、相手が英語で答えたらボールを渡すゲーム。ボールをもらった人が次の人に質問をして……とグループ内でボールが何周もします。

次は推理ゲーム。質問する人と答える人の2人1組になります。好きな色や食べ物、スポーツなどを英語で尋ね、答える人は「クラスの誰かさん」になりきります。誰になりきっていたのかを当てる、英語力だけでなく質問力、聞く力もいるゲーム。「Do you like yellow?」「Yes,I like yellow.」など、先生がやりとりのお手本を見せます。

答える人に配られたボードの裏には、「クラスの誰かさん」の好みが書かれています。やりとりする英文を頭に入れて、推理ゲームスタート! クラスじゅうで会話が繰り返され、「わかった、○○さんや!」「当たった~」「え~、違うん?」と楽しそうな声があがります。



オーストラリアの小学校、中学校で日本語教師だった川﨑先生。「園田東小学校では、卒業式などの行事で会うと、子どもたちが英語で話しかけてくれるんですよ」と笑顔で話してくれました。

「子どもたちにたくさん発話をしてもらうよう心がけています。1学年1クラスの園田東小学校はとてもアットホーム。授業以外でも自然と英語を使いますし、間違えても気にしない。とりあえず話してみる、という雰囲気ができています。外国語の授業では文化の違いを学ぶ機会もあるので、異文化の人とも理解し合える、広い心を持つ人に育ってほしいですね」
では、子どもたちは外国語の授業をどう感じているのでしょうか? 「英語をもっと学びたい」「将来海外に出たい」という夢があって外国語係になった6年生に話を聞きました。

「僕らは英語でのあいさつを担当しています。外国語の授業は自分のためになるから楽しい」
「英語は1年生からずっとやっています。英語がちょっとずつわかっていくのがうれしいです」
「休み時間も習った英語を使ってみたくて、友だちに英語で話しかけたりする。相手もちゃんと英語で返してくれます」

「英語、好きです。友だちと英語で話したりもする」
「習った英語を家でしゃべったりすると、お母さんがビックリして、なに言ってんの?って(笑)」
「外国語の授業は楽しい。今日のゲームは正解した人が少なかったけど、そこが面白かった」
「ブッカー先生も川﨑先生も英語がうまい。あんなふうになりたいです」
一学期には5、6年生が台湾の子どもたちと、インターネットを利用した無料テレビ電話で交流しました。「中学校の英語の先取りが目的ではなく、少しでも外国の文化や英語に親しんでもらいたい」と校長の大濱先生も様々な工夫をしています。

「全校朝会の時にニュースや季節の行事に関連した英単語を子どもたちに見せています。スポーツの時期なら『On your marks!』とか。読み方や意味を説明した後、身近な話につなげていきます。保護者や地域の方に配る『学校通信』にも、子どもたちが普段使っているクラスルーム・イングリッシュを載せて、ご家庭でも使ってみてください、とお願いしています。子どもたちが普段着感覚で英語を話せるようになってほしいですね」
外国語の授業を長年研究している園田東小学校。オープンスクールや公開授業などで、その研究成果を保護者や地域の方、他校の先生方に伝えています。
取材を終えて
相手に興味を持ち、相手の話をよく聞くこと――日本語も英語もコミュニケーションの基本は同じですが、なかなか難しい技術です。様々な工夫をこらしている外国語の授業では、子どもたちは楽しく学びながら、英語だけではなく社会で生きぬくための技術も自然と身に着けているように感じました。
【尼ノ國】楽しく、基本をしっかりと。―小学校の外国語学習(JTE版)
楽しく、基本をしっかりと。―小学校の外国語学習(ALT版)









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