日本一のバルーンアーティストが尼崎に

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風船使いたけむぅーさん(34)/ティーズ・アミューズファクトリー代表

バルーンアートの世界


写真、インタビューに答えるたけむぅーさん

 バルーンアーティストと聞くと、あなたはどのような人をイメージしますか。ピエロの格好をした大道芸人が、路上でパフォーマンスをしている姿を想像するでしょうか?実は日本一のバルーンアーティストが尼崎に住んでいるのです。

今回ご紹介するたけむぅーさんは、2018年に国内で行われる三大大会のうち2つ「JBANコンベンション2018」と「ツイスターズ2018」で優勝し、二度も日本一に輝いたプロのバルーンアーティストです。

 たけむぅーさんが創作したオリジナルのうさぎのキャラクター「うさむぅー」は、SNSに投稿するとさまざまな国の人から作り方を教えてほしいと連絡が入り、世界中にうさむぅーのファンがいるのだとか。


オリジナルキャラクターの「うさむぅー」。耳が特長で、プロでもすぐには作り方が分からないほど難しい作りになっているそう

 そもそも、日本でのバルーンパフォーマンスの始まりは大阪万博が開催されたときに、外国人がバルーンパフォーマンスを披露したことが始まりだそう。その後、1987年に発売された『balloon magic』(マービンLハーディ著) により広く普及したそうです。

 現在はアメリカで盛んに行われており、世界大会や全米大会が開催されるなど多くの活躍の場があります。誕生日にサプライズでバルーンを贈ったり、ホームパーティーで披露したりと日常にも浸透しているのだとか。しかし日本では、バルーンアーティストは数えるほど。その狭き世界にプロとして飛び込むきっかけは何だったのでしょうか?

子どもたちを笑顔にしたい


写真、インタビューに答えるたけむぅーさん
バルーンアーティスト同士で交流しながら、新しい作り方をみんなで考えるワークショップも行っています

 就職をきっかけに尼崎で暮らし始めたたけむぅーさん。たけむぅーさんは高校生の時に生徒会長として学祭を盛り上げたり、大学生時代にボランティア団体を設立したりと、仲間を募って団体を立ち上げる経験をしてきました。社会人になってからも、土日の空いた時間に子どもたちを楽しませるボランティアをしたいと考えていたといいます。

 「住んでいる尼崎でボランティア活動をしたいと思い、友達を集めて2011年2月に『Asobo!会』を自ら立ち上げました。いつも何かの火付け役になることが多いですね。そんな性分なんだと思います」とたけむぅーさんは笑います。


写真、インタビューに答えるたけむぅーさん
現在も仕事とは別に「Asobo!会」としてバルーンなどのボランティア活動を続けているのだとか

 「当時は仕事をしながら月に1、2回活動をしていました。バルーンは独学で、写真を見て練習したり自分で考えて作ったりしていました。バルーンの作り方を考えるのは、パズルを解く感覚。誰かに習うことは考えなかったです」。

いつしかバルーンが仕事に


「ツイスターズ2018」での優勝作品。約300本のバルーンを使い、3人で3時間かけ作成したのだとか

 2013年ごろになると、インターネットに出ているような基本的な形は全て作れるようになり、たけむぅーさんはバルーンに対する熱意が薄れ始めたそう。そんなとき、ストリートでバルーンを披露していたパフォーマーに出会います。

 「今まで見たことのない、オリジナリティのあるバルーンを作っている人でした。僕にとって初めて出会ったプロのバルーンアーティスト。大会には出ていない無名の方でしたが、バルーンを作りながら日本中を渡り歩く業界では有名な風船職人だったんです。『バルーンにはこんなに可能性があるんや』と衝撃を受けましたね」と当時を振り返ります。


写真、インタビューに答えるたけむぅーさん
普段は、保育園や幼稚園、ショッピングモール、住宅展示場でのイベントなど、企業や団体から依頼を受けてバルーンを作っています

 それからたけむぅーさん自身も、ストリートパフォーマーとして活動をするように。「人が集まる街中でパフォーマンスをしました。そこからプロの人ともつながりが増え、バルーンアーティストとしての仕事も入るようになっていきました」。その後、2014年には尼崎で会社を設立し、2017年に独立も果たします。


オリジナルキャラクター「くまむー」。ひとつの風船でも空気の量を調整することで、縮めたり膨らませたりと自由自在に操ります

バルーンの全国大会を尼崎で

 実はたけむぅーさんがプロとなるきっかけとなったパフォーマーは、数年前に亡くなられたそう。大会などに興味の無い職人肌の方だったので、もしあの人がメディアに取り上げられていたら、バルーンをもっとメジャーなものにできたのではとの思いがよぎるのだとか。

 尼崎で夏に開かれているみんなのサマーセミナーでの講座や、尼崎市民まつりでのイベント出演など、尼崎で活動を続けてきたたけむぅーさんですが、「さらにバルーンを広めていくような活動がしたい、素晴らしい作品があることを尼崎や関西の人に知ってもらいたいと思い、バルーンの三大大会のひとつであるツイスターズの実行委員長に手を挙げ、14年ぶりに関西で大会を開催することにしたんですよ」。


写真、インタビューに答えるたけむぅーさん
「尼崎には個性的な人が多いので、みんなでアートフェスなどを開催してみたい」というたけむぅーさん

 「目の前の人を喜ばせるためにやっているので、有名になることは興味ないんです。いつも見る人の想像を越えて驚かせたい、常に見たことのない新しいものを作ってみたいと考えています」と目を輝かせるたけむぅーさん。

 また2018年12月には、尼崎を飛び出して大阪にある子どもホスピスでも活動を実施。日本一になったことを自分の肩書きだけに使うのではなく、「誰かの役に立つことをして、風船に恩返ししたい」と思い、仲間を募ってチャリティイベントを行ったそう。「想像していなかったものが目の前に現れる経験をきっかけに、難病の子どもたちに夢や希望を持ってほしい。バルーンを使って何かの現象を起こしてみたいです。それは一人ではできないので、仲間と一緒にやりたいと思っています」。


子どもホスピスでのクリスマスイベントのようす

 たけむぅーさんが実行委員長を務める「第16回ツイスターズ2019in関西」は、2019年6月15日(土曜)、16日(日曜)に尼崎市総合文化センターで開催されます。5つの部門に分かれたコンテストのほか、一般の参加者が楽しめるブースもあるそう。尼崎で決まるバルーン界のチャンピオンを、ぜひ見に訪れてみてくださいね。








(プロフィール)

ふうせんつかい・たけむぅー 2012年から尼崎市在住。BPA公認バルーンアーティスト。ティーズ・アミューズファクトリー代表。凝り性の性格で「昔からプラモデルなどの工作や絵を書くことが好きだったので、バルーンにハマるのは自然なことだった」と話す。