6月9日(火)に「第2回みんなの尼崎大学オンラインゼミ」を開きました。人と人が出会う場であったみんなの尼崎大学ですが、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言を受け、集まることが難しい状況の中、オンラインゼミを開講しています。第2回は「やめられないをかんがえる〜コロナと依存症〜」をテーマに学びました。
依存症ってなんですか?
まずは尼崎市こども青少年課職員でソーシャルワーカーの内田扶喜子さんから、依存症についての説明をしていただきました。
依存症とは「特定の何かに心を奪われ、やめたくてもやめられない状態になること」。アルコールや薬物などの「物質依存」、ギャンブルや買い物、仕事などの「プロセス依存」、また人間関係における「関係依存」に分類されます。
内田さんは、窃盗で裁判になった摂食障害の女性の支援をきっかけに、依存の問題との関わりが始まりました。「他人に迷惑をかけていることを知りながらもやめられない」状態が依存の定義だといいますが、内田さんは「自分自身を傷つけている」状態も看過できないと話します。
「本人だけを支援したり、たとえば借金などの問題だけを取り出して専門的に解決するというのでは充分ではありません。たとえばアルコール依存症患者の子どもなど本人の周りで困っている家族も当事者で、実際には様々な問題が絡みあっている。その解決には、むしろ普段生活している関係性が大切。医療や法律の専門職だけでなく、地域のネットワークが必要になってきます。」
「依存症からの回復と生活の回復は容易いことではありません。でも回復できるという希望があります。」と内田さん。
もしかして私も依存症かも?
ステイホーム期間に、つい普段よりもお酒を飲み過ぎたり、ゲームに夢中になりすぎたりしたという人も多いのではないでしょうか。
そこで、参加者のみなさんの中にある「ちょっとだけ当事者」な部分を聞き、どうして自分は依存症にならずに踏みとどまっているのかをグループに分かれて話し合いました。参加者は、分かっているけどやめられないものとして、「アルコール」「スマホ」「買い物」をはじめ、「お米」「甘いもの」などをあげていました。
あるグループでは、「仕事をしているから依存症にならずに生活できているのかも」という意見が。生活リズムや社会での役割がなくなれば、ずっとそのことばかりに気を取られ、いつか依存症になってしまうのではとのことでした。
「買い物」をあげた人は家族が止めるからある程度のところで買わずに済む、など人間関係のおかげで踏みとどまっているという声もありました。
ギャンブル依存症支援の現場から
三田あおぞら法律事務所弁護士の吉田哲也さんは、債務整理や刑事事件の担当をきっかけに、ギャンブル依存症患者の支援をされています。ギャンブル依存症は本人の自己責任だと思われがちですが、吉田先生は「日本の社会構造がギャンブル依存症を増やしている。社会全体で考えるべき問題」だと話します。
日本での賭博は犯罪ですが、競馬、競輪などは特別法により合法で行うことができます。世界のギャンブル機械の約6割が日本にあり、カジノのある国を抜いてダントツの一位だというから驚きです。吉田先生の元には、借金が膨らみ債務整理に訪れる人が後を絶たないのだとか。「家族が借金を返済しても、多くの人がまたギャンブルをします。家族に申し訳なくて、泣きながらパチンコ台に座っている人もいます。それでも続けてしまうのは、本人の意思ではなく依存症だからなんです」と話します。
しかし吉田先生も「治すことは難しいけれど、回復することはできる」といいます。周りの人が肩代わりをしたり、安易な債務整理をすることは絶対にやってはいけないそう。借金がなくなった本人は、気持ちが立ち直らないまま、また新たな借金ができる状態(借金がないので新たに貸してくれる人がいる)になってしまうといいます。
特効薬はなく時間はかかりますが、本人に気付きを促し、自ら解決したいという気持ちで、同じ症状で苦しむ人同士のミーティングに参加しながら、少しずつ生活を回復していくことが大切だと話します。
質問タイムでは、参加者からさまざまな質問が出ました。「依存症になりやすい人ってどんな人ですか?」の質問では、吉田先生は「医者でないので医学的な回答はできないですが」と前置いた上で、「だらしない人が依存症になりやすいと思われるかもしれないですが、実際に当事者と接しているとむしろ真面目で何かを突き詰めがちな人の方が多いイメージです。でも誰しも依存症になる可能性はあります」と回答。
また、内田さんは「何か現実的に困ったという大きな問題として表出しない限りなかなか支援に結びつかないので、依存症と気づかない場合もあります。地域の中でどうアプローチして支えていくかが大切だと思います。」と話していました。
最後に内田さんと吉田先生から一言。
「依存の問題は、社会生活環境、人間関係と不可分。依存するから人間関係が壊れるのか、人間関係が壊れたから依存するのかどちらとも言えます。それでも誰かと生活しているから苦しい状況でも踏みとどまれていたり、依存症になっても仲間の存在で回復できたりと、社会資源や人との関係が回復に大きく関わっています」と内田さん。
吉田先生は「当事者ではなく、困り果てた家族が相談に来ることが多いです。債務整理でお金の問題を解決するのは簡単。でも、家族はお金に困っているのではなく、依存症からどのように回復するかを困っているんです。背景には病気や障がいの問題もあり、人それぞれに応じた支援のあり方が求められています」と話していました。
内田さんと吉田さんのお話は、YOUTUBE「みんなの尼崎大学」でも公開していますのでご覧下さい。
新しい世界に、考えさせられることの多かった第2回のオンラインゼミ。尼崎市こども青少年課・疾病対策課・尼崎ソーシャルワーク研究会のご協力のもと開講できました。
第3回はガラッと内容が変わって、7月7日(火)夜7時から「オンラインは舞台だ!演劇レッスンで表現力を学ぼう」を開きます。県立ピッコロ劇団の本田千恵子さんを講師に、スマホやパソコンでの発話や対話のコツを演劇の世界から学びます。参加者数が限られていますので、興味のある人はお早めに!詳しくは下記をご覧ください。