12月のみんなの尼崎大学 相談室と談話室を開催しました(令和6年12月11日)

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 すっかり冬の空気となってきた12月11日(水)にみんなの相談室を開催しました。今回の夜の談話室では、「公共空間の活用」をテーマに尼崎市役所で空き家対策に取り組んできた職員をゲストに、使われていない場所をどう活かすか話し合いました。そんな相談室の様子をレポートします。

「みんなの尼崎大学 相談室と談話室(略して、みんなの相談室)」とは…
 偶数月の第2水曜日の13:00〜14:30(ひるの相談室)、19:00〜20:30(よるの談話室)をあまがさき・ひと咲きプラザで開催しています。ひるの相談室は「尼崎でこんな活動・事業をしてみたい」「進めたいプロジェクトがあるから、仲間が欲しい」「何ができるかわからないけど、お手伝いをしてみたい」など、活動の場を見つけたい人や広げたい人が相談できる場です。よるの談話室は、あるテーマについて話題提供者から話を聞き、集まった人たちで、そのテーマについて談話をする場です。



開始時にはスタッフを含め、参加者が順に自己紹介をします

 今回の「ひるの相談室」は、参加者は3名。初めての参加者からも相談が持ち込まれ、今回は二つの相談事について、少人数だからこそたっぷり意見を出し合うことができました。

精神疾患を身近に感じる場づくりをしたい


相談事に耳に傾ける参加者

 今回、初参加で相談室に参加した尼崎在住のよしこさん。自身が20年ほど前から、精神疾患を抱えながらも、神戸市内で当時者の会を主催するなど活動してきました。「精神疾患は早めに対処すれば重症化せずに済むこともあり、精神疾患とはどんなものか、当事者や家族が気軽に話せる場づくりができないか」と、自身の経験を踏まえて提案されました。

 「精神疾患にどんなイメージを持っていますか?どんな場なら来やすいと思いますか?」という問いかけに、「実は…かつて適応障害と診断されたことがある」「学生時代に不登校になり精神科に通院していた」と、当事者だった経験を語る参加者やスタッフも。そのときに、どんな気持ちだったか、周りの対応などの経験を語られました。

 意外にも精神疾患の経験者が多いことに驚くとともに、精神疾患が遠いものでなく「みんなが当事者」の可能性があることが共有できました。

 重症化する前に「すぐに病院に行く」ということが大切とのことですが、まずはどういう状態が精神疾患なのか、誰もがなる可能性のある病気に対する予備知識が必要なのかもしれません。よしこさんと一緒に、精神疾患を取り巻く状況を変えていきたい、という方は事務局まで。

続・あなたの知らないジャグリングの世界


今回もジャグリングのボール競技の実演を見せてくれた、きぞはるさん

 前回に引き続き、「ジャグリングで尼崎のまちに貢献できる企画を考えたい」というきぞはるさん。きぞはるさんは、ジャグリングの競技者でもあり、尼崎でジャグリング道具のひとつシガーボックスを主に製造する工房を経営されています。去年6月には尼崎ジャグリングクラブ「あまのジャグ」を立ち上げ、現在20名ほど所属しています。

 「ジャグリングショーを提供するだけでは面白くない」「できれば親子向けの企画をしたい」と考えているきぞはるさん。

 「子どもの習い事として教室を開催しては?」という提案に、「体験教室を開いても、なかなかその後に繋がっていかないんです…」ときぞはるさん。親が積極的に子どもに習わせたいとは思ってもらえない悩みがあります。

 社会に必要とされる課題をジャグリングで解決!と「ジャグリング×〇〇」がハマるものは何だろうと、みんなでアイデアを出し合いました。
 「ジャグリング×シニアの生きがい」「ジャグリング×国際交流」などの意見が出たのですが、あなたは何を思いつきますか?


「ひるの相談室」の話し合った内容はこちらの板書に

まずは尼崎の空き家問題を学ぼう

 19時からスタートした夜の談話室では、尼崎市空家対策担当の濱森健吾さんをゲストにこのまちの空き家事情についてお話を聞きました。キャリア19年目、国土交通省にも出向して不動産を学んできた、まさに空き家のプロフェッショナルです。


自身も市内で中古住宅を購入し現在絶賛リノベーション中という濱森さん。

 令和2年度の「尼崎市空家等実態調査」によると、市内の空家件数はなんと8245件。地区別では小田地区、大庄地区、中央地区と市の南部に多いようで、うち341件は倒壊の可能性のある危険な状態だといいます。「尼崎市は特に長屋のケースが多いんですよ」という濱森さん。

 その理由は、戦後工業都市として急増する人口に対応するため、企業が地主から土地を借りて従業員用の文化住宅と呼ばれる長屋を大量に建ててきたことに由来します。その後、空き家が増える一方で、いくつかは子どもの代へと住み継がれたため、全体の建て替えが困難になっているケースが少なくないそうです。

空き家が悪いわけじゃない。その公共性とは?

 こうした危険な長屋の除却費用を補助したり、使える空き家についてはリフォーム費用を補助するなど、10を超える空き家関連の補助制度をそろえています。尼崎市はどうしてそこまで力を入れるのでしょうか。

 「空き家が悪いわけじゃありません。ある程度の物件のストックは住み替え先や新たな事業には必要です。ただし適切に管理をしないと都市のイメージや治安の悪化にもつながるため、私有財産でありながら公共性は高い。空き家になる前から所有者にはたらきかけるのが大切だと考えています」と濱森さん。今後は新たな条例の制定にも取り組んでいるそうです。

借りたい人と貸したい人がつながる方法

 濱森さんの話題提供の後は、参加者との談話タイム。川西市からの参加者からは、ニュータウンの空き家が増えているけれど、状況を自治会で共有しながら対策しているという話を聞き、所有者だけでなくご近所の力が大切なことを学びました。


参加者の空き家問題への関心は高く、自身の体験や現状を話す人たちも。

 また、祖父母が住んでいた家を相続して、将来自分が空き家の所有者になってしまう心配の声も。自分の暮らす家だけでなく、空き家問題は思いがけず自分が当事者になってしまうケースもあるようで、濱森さんからは「すまいの終活」の必要性が指摘されました。

 さらに商店街でお店を開きたいという参加者は「商店街にはシャッターの閉まった空き店舗がたくさんあるけれど、借りられるのかどうかわからない」という声が。これに対して「さかさま不動産尼崎支局」という取り組みが紹介され、空き家の多い杭瀬地区を中心に大家さんが借りたい人を逆指名するようなマッチングに期待が集まりました。

 誰もが使うことができる公園や広場と違って、空き家は私的空間でありながら、その使われ方によってまちのイメージに影響を与えてしまうという公共性もあります。人口減少時代の今こそ、これらを上手く管理したり使いこなしたりする知恵が求められていることを強く感じた談話室となりました。

 次回のみんなの尼崎大学相談室・談話室は、2月12日(水)に開催。「ひるの相談室」は13:00~、「よるの談話室」は19:00~で、次回は「共感者集めと仲間づくり」をテーマに参加者で話し合います。たくさんのご参加お待ちしております。