2023年5月にJR塚口駅近くの上坂部でみんなの門出を応援するカフェ「cadode cafe(カドデカフェ)」をオープンした高井萌さん。
もともと尼崎には縁もゆかりもなかった高井さんが尼崎に住み始め、カフェまでオープンすることになった経緯や、今住んでいるまちの好きなところをお話ししてもらいました。

尼崎に行き着いたのは運命だったのかもしれない
夫と結婚前、「そろそろ同棲したいね」といって場所を探していたのが2018年のこと。
もともと、私は大阪出身で大阪市内で会社員として働き、夫は埼玉出身で、就職で神戸に出てきたタイミングで出会いました。
「住むなら大阪〜神戸の間がいいよね」といってJR大阪駅から順番に駅を降りていくことに。最初に降りたのがJR塚本駅。商店街を歩いてみたけれど、私たちにはあまりピンと来なくて、次の駅に進むことにしました。
次に降り立ったのがJR尼崎駅、通称J尼(ジェイあま)。キューズモールがあって、商店街もにぎわいがあって、「ここにしよう!」とその日のうちに物件を契約しました。
親からは「え~!?アマ!?」と少し反対もされましたが、「めっちゃ良さそうなところやから!」と押し切りました。やっぱり、自分たちの直感で尼崎を選んで良かったと思っています。
双子を出産し子育てしながら街とつながる

同棲生活を経てめでたく結婚。その後妊娠をしたのはまさかの双子でした。最初に住んでいた物件では子育ては難しいため、ファミリー向けの住まいを求め、園田方面へ引っ越しすることに。直線距離にして約1.5kmの近距離の引っ越しでした。
そして住み始めたのが今の場所です。スーパー、公園、病院、保育園、お花屋さんも、すべて徒歩圏内でそろっていて便利なのも嬉しいところ。ただ、双子ベビーカーでのお出かけはどこへ行っても不自由なことが多く、出産前のようにお出かけをするには勇気がいりました。

近所のスーパー「ファームマート」は双子ベビーカーでは入れないお店。でも、お店の人が「子どもたち見とったるで!」と言ってくれるのでありがたく甘え、よくお買い物をさせてもらっていました。
近所のおばちゃんは会うたびに「元気か~?風邪ひいてないか~?」って心配してくれたり、子どもたちがイヤイヤ期のときには声をかけてなだめてくれたり。会うたびに「お母さんえらいわ〜」って褒めてもらえて、泣きそうになることもありました。
上坂部周辺の人たちの心地よいおせっかいがうれしかったです。
芋づる式につながり始めたご縁たち

2度目の出産後、初めて地域に出たきっかけはNPO法人つなげるが主催の「ふたご会」でした。参加した後、私自身も多胎ママのピアサポーターとしてふたご会のスタッフを始めることに。
しかし、ふたご会を開いてみると、来られる人が少ないことにも気が付きました。外出の難しさは自分が身をもって経験していたこともあり、まずは自分の住む地域でママの外出の一歩目となる居場所づくりをしたいと思い、今運営しているcadode cafeの構想を始めました。
また、みんなのサマーセミナーというイベントをきっかけに、コミュニティナースである好吃(ハオチー)食堂の女将、福田さんと出会い「私もコミュニティナースとして活動したい!」と思い、間借りでの居場所づくりを開始。そこから芋づる式にたくさんのご縁があり、尼崎で活動する魅力的な人たちと知り合うことができました。「尼崎には挑戦できる土壌が整っている」、そんな風に思えます。
働く場所でもあり、遊ぶ場所でもあるcadode cafe

地域への恩返しの気持ちも込めて作ったのが、「みんなの門出を応援するカフェ」をコンセプトにしているcadode cafe(カドデ カフェ)。元々コーヒーを淹れることや、おやつを焼くことが大好きな私にとって、居場所をカフェにするのは自然なことでした。
コンセプト通り、月曜日と水曜日は、自分のお店を持ちたい方が間借り店長をしてくれています。間借り店長の日には普段のcadode cafeとは異なるメニューを楽しむことができます。
cadode cafeに来てくれる方は、お話をすることを目的に来てくれる人、クッキー屋さんやスコーン屋さんとして使ってくれる人、自分の仕事を実践する人など様々です。
店主である私も、休みの日にもついつい遊びに行ってしまうお店になってきました。他にもイベントが開かれている日もたくさんあって、日々飽きないお店です。

DIYで改装した2階のスペースは、GASAKI BASE(過去記事参照)の足立さんに教えてもらいながらキッズスペースや授乳室、おむつ替え台も用意して、まさに小さい子の育児中に私が欲しかった場所になっています。
子連れで外に出る初めての場所として使ってくれる方も多く「1か月健診が終わったので来ました」という方も。初めて来たときにはまだ赤ちゃんだった子が成長する姿を追わせてもらえるのもうれしい限りです。
私はここで、コミュニティナースとしてみんなのおせっかいを焼くのがライフワークになっています。
我が家のお気に入りスポット

最近、休日を住んでいる地域で過ごすことが増えました。遠出しなくても、楽しめる場所がたくさんあるってすてきなこと。
近所には公園がいくつもあります。その中でも我が家のお気に入りは近松公園。池があって、森があって、桜の名所でもあります。四季をそれぞれ楽しめ、春にはピクニックをしたり、秋には落ち葉を集めてみたりして、子どもたちも近松公園を楽しんでいます。

JR塚口駅付近もにぎわってきました。東塚口町の「sukuta COFFEE」も大好きなお店のひとつ。時間があるとついのぞいてしまうおしゃれなカフェで、プリンやコーヒーもとってもおいしい。飲食店をやっている者同士でお話できる時間もありがたい限りです。

最近、市の補助金を使って、上坂部LOCAL課という名前で地域活動も始めました。cadode cafeがある上坂部地域の人たちともっとコミュニケーションをとるために、マルシェイベントの開催や地域のマップの作成をしました。上坂部に来られたらぜひ上坂部LOCALマップを手に取ってくださいね。
作成して思うのが、お店の人と顔が見える関係性ってどれだけ時代が進んでいってもやっぱり大切だということ。これから地域の盛り上げ&つなぎ役になっていけたらうれしいです。
これからも尼崎の地域に溶け込んで暮らしていく

上坂部にcadode cafeを開いたのは自分の子どもたちの小学校の校区内だからという理由もあります。子育て中の親がごきげんだと、子どもたちにもきっとごきげんが広がっていく。自分たちが生活する地域を今よりさらに住みやすい場所にできるよう、まずは子育て中のママたちが自分らしくいられる居場所づくりから。間接的に、地道に、未来に投資をしているような感覚です。
尼崎は大人がすごく楽しそうに過ごしている。年上の人たちが、本気で楽しんでいる様子を近くで見られる。そんなロールモデルの存在があるから、自分の将来もすごく楽しいことが想像できるのです。
これからも自分が一番わくわくできる居場所を作り、地域を活気づけていくことが、お世話になった場所への恩返しになると信じて。



プロフィール
取材・文:たかい・もえ 写真:たかい・かずき
cadode cafe店主。株式会社cadode代表取締役。大学で看護学を専攻するも、病棟での看護師像に自分の理想との乖離を覚え新卒で航空会社に入職。その後3人のこどもを出産し、育休中にコミュニティナースとして活動を開始。退職翌日に株式会社cadodeを創業し、地域の保健室のようなカフェとしてcadode cafeにて居場所づくりを実践中。
夫のかずきさんは会社員をする傍らフォトグラファーとしても活動中。
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SPOT 地元で挑戦