
今年3月、尼崎に新たに「ゼロカーボンベースボールパーク」が誕生しました。阪神タイガースファーム本拠地のスタジアムや小田南公園軟式野球場、多目的広場などが備わっています。
今回のみんなの尼崎大学オープンキャンパスでは、「ゼロカーボンベースボールパークってなに?どのような取り組みをしているの?」を学びました。そして、尼崎市の担当課の職員、球場を運営されている方にもご案内いただきながらボールパークやスタジアムの中を見学したり、「これからこの場所でどのようなことができるだろう?」と、今後の活用のアイデアを出したりしました。当日の内容をまとめます。
当日はオープンキャンパス日和!
屋外を歩いて見学する時間があるため雨を心配していましたが、当日はありがたいことに快晴!絶好のオープンキャンパス日和、そして野球日和(!)です。

参加者のみなさんが集合した後は、球場内の多目的室へと向かいます。ここは普段は入れないエリア。この部屋では普段、選手たちがミーティングをしているといいます。
部屋へ移動した後は、5つのチームに分かれて自己紹介の時間。チーム名からも阪神熱がビシビシ伝わってきます。それでは、みんなの尼崎大学の事務局メンバーで大の阪神ファンでもある坂井さんこだわりのチーム名をご紹介します。
①村山実チーム
②吉田義男チーム
③星野仙一チーム
④岡田彰布チーム
⑤藤川球児チーム

自己紹介では普段していること、なぜ今日参加したのか、今日楽しみにしていることなどを話し合いました。参加者のみなさんは「選手のトレーニング方法を参考にしている」という熱血阪神ファンの方から、近所にボールパークができて気になっていたという方、環境への取り組みがどのように行われているのか知りたかったという方などさまざま。「阪神ファン」という理由だけではなく、いろいろな思いで集まってくださいました。

司会の若狭さんが「これまで46回オープンキャンパスを重ねていて、自己紹介でこんなに盛り上がったのは初めてです!」と言うほど会話に花が咲いていました。みなさん、信じているものが同じだからでしょうか…(もちろん、阪神ファン以外の方も楽しめる内容でした)。
ゼロカーボンベースボールパークって?
続いて、尼崎市経済環境局経済部産業政策課の西岡さんより、ゼロカーボンベースボールパークがどのような場所なのか、どのような目的で運営されているのかについて説明していただきました。

ゼロカーボンベースボールパークは、阪神電気鉄道株式会社(以下:阪神電鉄)と尼崎市が連携・協力して誕生したスタジアムです。人口減少が大きい尼崎市南部地域(阪神沿線地域)を活性化させたいという目的が一致し、尼崎市と阪神電鉄がまちづくり協定を締結。その一環として、取り組みが進められています。公園を活用した事業を産業政策課が担当しているのも、上記のまちづくり協定が結ばれていることが理由。「この場所が尼崎市南部地域のにぎわいの拠点となってほしい」と、担当の西岡さんは語ります。
元々、小田南公園があった場所がゼロカーボンベースボールパークになったことで、地域住民の方からは一部批判や反発もありました。以前、みんなの尼崎大学でも小田南公園に関する学びの場を設けたことがあるのですが、市としても丁寧に住民の方とのすり合わせを行っていったというお話を伺いました。後述しますが、そうした背景のため、災害対策の機能を取り入れたほか、大物公園や大物川緑地など周辺のエリアを一体的によりよい生活環境にしていくことで、近隣の地域にとっても素敵な変化を生み出すことを意識したそう。
そうしたさまざまな調整や計画を経て、ゼロカーボンベースボールパークは環境省第1回「脱炭素先行地域」に選定されました。脱炭素先行地域とは、2050年カーボンニュートラルに向け、地域の特性に合わせた温室効果ガス排出削減のための取り組みをしている地域のこと。第1回の応募には全国79件の中から26件が選定されたそうですが、その中でも今回の取り組みは最小のエリア面積だったそうです。小さなエリアに重要な要素をぎゅぎゅっと詰め込んだことと、公害のイメージを大きく変える取り組みであったことが、ゼロカーボンベースボールパークが選定された大きな理由です。
それでは、温室効果ガス排出削減のための取り組みとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。西岡さんは話します。
西岡さん「ボールパーク内の施設や周辺の公園に太陽光パネルを設置します。また、足りない電力は市クリーンセンターの廃棄物発電の余力電力を活用しています。さらに、市内に6駅ある阪神電鉄の駅舎にも太陽光発電の設備を設置し、阪神バスもEV化しています。ゼロカーボンベースボールパークの中だけでなく、まち全体でゼロカーボンになるような取り組みをしています」
つまり、ボールパークへ向かうときも、野球を観戦しているときも、試合が終わって帰るときも、ずっとゼロカーボンになるように工夫されているということなんです。

ボールパークをぐるっと見学!
西岡さんから「ゼロカーボンベースボールパークとはなにか?」「どのような思いでつくられたのか?」をお聞きした後は、いよいよ見学へ!ボールパークを周回しながら、練習場や小田南公園軟式野球場なども見学しました。

スタジアムの電光掲示板の裏にも太陽光パネルが設置されていたり、「冷暖房の室温の目安、夏は28℃、冬は20℃にしよう!」などの省エネに関するフラッグが並んでいたり、災害用マンホールトイレが設置されていたり。西岡さんに案内していただきながら、ゼロカーボンベースボールパークの特徴を実感しました。

いよいよ、スタジアムへ潜入!
続いて、球場運営をされている副球場長である矢浪さん案内のもと、いよいよスタジアムへ!参加者のみなさんのボルテージが一気に上がります。

まずは、内野3,600人・外野800人の計4,400人が収容可能だという観客席を見学。ここにもゼロカーボンベースボールパークならではの特徴がありました。なんと、コクヨプレミアムシートの座面のクッションカバーは、甲子園球場で飲まれたビールのカップをリサイクルしてつくられているそう。シートは、コクヨさんと帝人さんの共同開発でつくられています。

そしてついに、グラウンドに足を踏み入れます。普段入ることのできないベンチに座ったり、ブルペンでシャドーピッチングをしたり、外野の壁にぶつかってみたりと、なかなかできない選手目線での体験を楽しまれていました。
グラウンドの土と芝は、甲子園球場と同じく阪神園芸株式会社さんが管理されています。外野の天然芝は昨年の7月から敷かれ、散水をしながら根付かせていったといいます。
ボールパークでなにができるだろう?
多目的室に戻り、最後に再びチームに分かれて、ボールパークのこれからの活用についてアイデア出しをしました。


「阪神クラフトビールをつくりたい。キリンのビール工場があった尼崎ならではだと思う」「カーボンニュートラルをもっと伝えるために、この場所が環境のスタディツアーの教材になったら嬉しい」「尼崎市内のいろいろな学校がこの場所に集まって、体育大会をしてほしい」など、ゼロカーボンベースボールパークと地域のつながりが広がるアイデアがたくさん出てきました。
尼崎に新たに誕生した「ゼロカーボンベースボールパーク」を知るオープンキャンパスは、これにて終了!参加者のみなさんからは、「ボールパークがまちのための取り組みをたくさんしていると知ることができて良かった」「スポーツと脱炭素を組み合わせる工夫が素敵」などの声をいただきました。
今後、さらに地域にひらいていきたいというゼロカーボンベースボールパーク。9/27(土)と9/28(日)には、阪神タイガースと尼崎市が共同で「あまトラフェス Supported by 尼崎信用金庫」を開催予定!みなさまも試合を観戦しに、イベントに遊びに、ゼロカーボンを学びに、ボールパークをお散歩しに、ぜひ足をお運びください。